「全員に好かれようとするな」──新渡戸稲造『自警録』に学ぶ、信念を貫く勇気
「全員に好かれる人」は本当に幸せなのか?
「誰からも可愛がられるような人は、この世にはいない。もしそのような人がいるとすれば、それは自分の意志がない者だろう。」
これは新渡戸稲造が『自警録』で述べた言葉です。
一見、厳しいように聞こえますが、この一文には、**現代社会にこそ必要な“心の強さ”**が詰まっています。
SNSや職場で“誰からも嫌われたくない”と思う人は多いでしょう。
しかし、全員に好かれようとすれば、自分の意見を押し殺し、波風を立てない生き方しかできません。
それは一見「平和」ですが、同時に「自分を失う」生き方でもあるのです。
可愛がられるより、尊敬される人になれ
新渡戸が言う「可愛がられる人」とは、誰にも逆らわず、いつも相手の顔色をうかがっている人を指します。
そういう人は人に憎まれることはありませんが、同時に、世の中で大きな仕事をすることもない。
「世間で華々しく活躍する人間で、敵のいない者はない。」
この言葉は、まさに現代にも通じます。
意見を発信すれば、必ず賛同と反発が生まれます。
自分の信念に従って動く人ほど、誰かに批判される。
でも、それは「敵がいるから悪い」ではなく、「自分の意志を貫いている証」なのです。
可愛がられる人より、信頼される人、尊敬される人を目指すほうが、ずっと実りある人生になります。
意志を持つ人は、必ず反対される
新渡戸の言葉を読みながら思い出すのは、「嫌われる勇気」という現代的テーマです。
何かを成し遂げようとする人、現状を変えようとする人には、必ず反発がつきまといます。
たとえば、職場で新しい提案をする人。
あるいは、周囲の同調圧力に流されず、自分の考えを貫く人。
彼らはしばしば「扱いづらい」「頑固だ」と言われますが、実はそれこそが“意志ある人間”の証拠です。
誰からも好かれようとするのではなく、自分の信じる道を選ぶ勇気こそ、人生を豊かにするのです。
「嫌われること」を恐れずに生きる
私たちは子どものころから、「みんなと仲良くしなさい」と教えられてきました。
もちろん、それ自体は大切な価値です。
しかし、大人になってもそのままの感覚で生きると、自分の本音を抑えてしまう危険があります。
新渡戸の言葉は、そんな私たちにこう語りかけます。
「誰からも可愛がられる人間になるな。それは、自分の意志を捨てた人間である。」
人から嫌われることを恐れるよりも、自分を裏切ることを恐れる。
それが、真に誠実な生き方だと、新渡戸は教えているのです。
まとめ:信念ある人は、孤独ではない
本当の強さとは、全員に好かれることではなく、自分の軸を失わないことです。
信念を持つ人は、ときに孤独に見えるかもしれません。
しかしその孤独は、誇り高い「精神の自由」でもあります。
人に合わせるのではなく、心に従って生きる。
可愛がられるより、尊敬される人になる。
それが新渡戸稲造が『自警録』で伝えたかった“自律した人間の生き方”なのです。
