ローマ皇帝にして哲学者であったマルクス・アウレリウスは『自省録』の中でこう述べています。
「たとえ三〇〇〇年生きることになろうとも、それこそ永遠に近い年月を生きることになろうとも、けっして忘れるな。誰も、今生きている人生以外の何ものも失うことはなく、今失おうとしている人生以外の何ものも生きることはない。」
この言葉は、人生において本当に私たちの手にあるのは「現在」だけであることを教えています。
過去と未来に縛られる現代人
私たちはしばしば、過去や未来に心を奪われます。
- 過去について:「あのとき別の選択をしていれば」「もっと努力していれば」と後悔する
- 未来について:「次はうまくいくはず」「期待どおりに進んでほしい」と願う
もちろん、反省や計画は大切です。しかし、過去はすでに終わったものであり、未来はまだ存在していません。その間にある「今」を見失えば、せっかくの贈り物を無駄にしてしまいます。
ビル・キーンの言葉に込められた真実
アメリカの漫画家ビル・キーンはこんな名言を残しました。
「昨日は過去で、明日は未来だが、現在は神様の贈り物。だからプレゼントと呼ばれるのだ。」
まさに、今この瞬間が「プレゼント=贈り物」であることを示しています。私たちはすでにその贈り物を受け取っているのに、過去や未来のことばかり考えているうちに有効期限が切れてしまうのです。
「現在を生きる」ことの意味
現在を生きるとは、刹那的に楽しむことではありません。むしろ「今この瞬間に意識を向ける」ことです。
- 誰かと話すときはスマホを見ずに相手の目を見る
- 食事のときは味や香りをじっくり感じる
- 散歩のときは空の色や風の匂いを楽しむ
こうした小さな意識の積み重ねが、「生きている実感」をもたらします。
ストア派哲学に学ぶ「今の使い方」
ストア派は「制御できるものと制御できないものを区別せよ」と説きました。
- 制御できないもの → 過去の出来事、未来の運命
- 制御できるもの → 今この瞬間の選択、態度、行動
つまり、私たちが本当に向き合うべきは「現在」しかないのです。未来を案じるよりも、今できることを最善の形で行う。その積み重ねこそが、後悔のない人生につながります。
今日からできる「現在を生きる」実践法
- 一日の最初に深呼吸する
「今日という日をどう過ごすか」を意識するだけで、スタートが変わります。 - 「今していること」に集中する
マルチタスクを避け、一つのことに没頭しましょう。集中は幸福感を高めます。 - 夜に振り返りを行う
「今日を十分に生きられたか」を短く日記に書くことで、日々の充実度が増します。
まとめ ― 今という贈り物を活かす
過去は変えられず、未来は予測できません。私たちが本当に手にしているのは「現在」だけです。
マルクス・アウレリウスの言葉も、ビル・キーンの比喩も、その真実を指し示しています。だからこそ、過去を悔やまず、未来を恐れず、今この瞬間を生きましょう。
現在を十分に生きることができれば、その喜びは生涯にわたって続くのです。