ローマ皇帝にして哲学者でもあったマルクス・アウレリウスは『自省録』にこう記しました。
「今日、私は煩悶から抜け出した。放り出した、と言ったほうがよいかもしれない。煩悶は私の外から来たのではなく、私自身の中に存在していたのだから。」
この言葉は、悩みやストレスの原因は外部の出来事ではなく、自分の心の中にあるという事実を鋭く示しています。
外に原因を求めてしまう私たち
忙しい日々の中で、私たちはついこんな言葉を口にしてしまいます。
- 「仕事に疲れ果てた」
- 「上司にうんざりする」
- 「人間関係に振り回される」
しかし、よく考えてみれば、仕事そのものが私たちを疲れさせているわけではなく、上司が直接「疲れ」という感情を心に流し込んでいるわけでもありません。実際に心を乱しているのは、私たち自身の解釈や受け止め方なのです。
ストア派が説く「ヒュポレープシス」
ストア派哲学には「ヒュポレープシス」という考え方があります。これは「心が出来事をどう取り上げ、どう判断するか」という意味です。
同じ出来事でも、人によってストレスになったり、チャンスと感じられたりするのはなぜでしょうか。それは出来事自体が問題なのではなく、私たちの見方や解釈が違うからです。
だからこそ、外部を責めるのではなく、心の内側を見直すことが重要になります。
悩みの原因を外に押しつける危険性
「仕事のせいで疲れた」「あの人のせいで落ち込んだ」と外に原因を押しつけることは、一時的には気が楽になるかもしれません。しかし、それでは状況は変わりません。
むしろ、常に他人や環境に自分の感情を左右される「受け身の生き方」になってしまいます。これは嫉妬や不満と同じく、自分の成長を妨げる要因になるのです。
心を整えるための3つの実践法
1. 感情と出来事を切り離す
「今感じているのは、出来事そのものではなく、自分の解釈だ」と意識しましょう。それだけで心は冷静になります。
2. コントロールできるものに集中する
外部の出来事は変えられませんが、自分の態度や反応は選べます。ストア派の「制御できるもの/できないもの」の区別を実践しましょう。
3. 毎日の終わりに振り返る
日記やメモに「今日は何に心を乱されたか」「どう解釈を変えられたか」を書き出すことで、少しずつ自分の思考習慣を整えられます。
まとめ ― 悩みを生み出すのは自分自身
マルクス・アウレリウスが示したように、悩みの原因は外にあるのではなく、自分の内側にあります。
外部を変えることは難しくても、自分の心の持ち方は変えられます。その意識を持つだけで、仕事や人間関係のストレスも少しずつ和らぎ、悩みから解放されていけるのです。
悩みをつくるのは自分。だからこそ、悩みから抜け出す力もまた、自分の中にあるのです。