成功にも失敗にも揺れない心──『菜根譚』に学ぶ、人生を安定させる「平常心」の力
成功も失敗も「通過点」にすぎない
『菜根譚(さいこんたん)』には、次のような一節があります。
人から情けをかけられたり、手厚い待遇を受けているときに、思わぬ災難に見舞われることがある。
したがって、何でも思い通りに事が進むようなときこそ、本当にこれでいいのかと反省し、気持ちを引き締めなければならない。
また、失敗や挫折をした後に成功のきっかけをつかむこともある。
したがって、失敗して思い通りにいかないときでも、あきらめて投げ出してはならない。
これは、成功と失敗の両方において**「心のバランスを保て」**という教えです。
順調なときほど慢心せず、苦しいときほど希望を捨てない。
まさに“揺れない心”の重要性を説いています。
順調な時こそ、危険が潜んでいる
人は成功すると、自分の力を過信しがちです。
努力が報われた喜びはもちろん大切ですが、菜根譚はそこに「落とし穴」があると指摘します。
思い通りに進んでいるときほど、油断が生まれる。
「自分はもう大丈夫だ」と気を抜いた瞬間、足元をすくわれることがある。
たとえば仕事で成果を出したあと、感謝や謙虚さを忘れてしまう。
あるいは、周囲の支えに気づかず、自分だけの力だと勘違いしてしまう。
そうした“心のゆるみ”が、後に大きなトラブルを呼び寄せるのです。
菜根譚は言います。
「うまくいっているときほど、自分を省みよ。」
成功は終点ではなく、次の挑戦への入り口。
そこで気を引き締められる人こそ、長く信頼される人なのです。
失敗の中にこそ、次の成功の芽がある
一方で、失敗や挫折は、誰にでも訪れます。
しかし、菜根譚は「そこで投げ出すな」と語ります。
失敗は「終わり」ではなく、「学び」です。
そこには、次の成功へとつながる“種”が必ずあります。
たとえば、挑戦して失敗した経験は、リスクの見極め方や忍耐力を教えてくれます。
挫折の痛みは、人の気持ちを理解する優しさを育てます。
つまり、失敗の中でしか得られない成長があるのです。
むしろ、思い通りにいかない経験がある人ほど、深みのある生き方ができる。
菜根譚の「失敗してもあきらめるな」という言葉には、そんな確信が込められています。
成功と失敗を「対立」ではなく「循環」として見る
多くの人は、「成功=良い」「失敗=悪い」と考えます。
しかし、菜根譚の視点では、両者は対立するものではなく、循環するものです。
成功が永遠に続くことはなく、失敗が永遠に続くこともない。
波のように上がり下がりを繰り返しながら、人は成熟していく。
だからこそ、浮かれても落ち込んでも、そこに留まりすぎてはいけない。
成功も失敗も「一時の風景」として眺めるくらいの余裕を持てば、心は乱れません。
成功は次の試練の始まりであり、
失敗は次の成功の予告である。
そのように受け止めることができれば、どんな状況でも心は安定します。
平常心を保つ3つの習慣
- 「今」に集中する
過去の成功や失敗を引きずらず、いま目の前の一歩に意識を向ける。 - 成功時こそ感謝を言葉にする
順調な時に「自分だけの力ではない」と口に出すことで、謙虚さが保たれます。 - 失敗を「経験」として記録する
失敗を恥とせず、学びとしてノートに残すことで、同じ過ちを繰り返さなくなります。
これらを実践することで、心の波を穏やかに保てるようになります。
「成功に驕らず、失敗に屈せず」——その姿勢こそ、長く信頼される人の共通点です。
まとめ──心を静める人が、最後に勝つ
『菜根譚』のこの一節が伝えるのは、成功にも失敗にも飲み込まれない生き方です。
成功しても気を抜かず、失敗しても立ち上がる。
その姿勢が、人生を安定させ、成長を続ける力になります。
どんな出来事も、「過信せず」「悲観せず」。
その中庸の心を持つ人が、最後には一番強い。
『菜根譚』は、何百年経っても変わらない真理を教えています。
「上を見ても、下を見ても、心を動かすな。
平らな心こそ、人生を支える最良の財産である。」
