『とりあえずやってみる技術』堀田秀吾|「やる気が出ない」を科学で解決する一冊
「やる気が出ない」は意志の弱さではなく、脳の仕組みだった
「やらなきゃいけないのに、体が動かない。」
そんな自分を責めた経験は誰にでもあるでしょう。けれど本書『とりあえずやってみる技術』(堀田秀吾著)によると、それは意志の弱さのせいではなく、脳の正常な反応なのだそうです。
人間の脳は変化を“リスク”と捉え、なるべくエネルギーを使わない方向に動こうとします。これを心理学では「現状維持バイアス」と呼びます。
つまり、「行動できない」ことは怠けではなく、脳の省エネ設計による自然な防御反応なのです。
行動を止める“失敗の不安”と“セルフハンディキャップ”
私たちが行動をためらう大きな理由の一つが「失敗するかもしれない」という不安です。
堀田氏はこの心理を「セルフハンディキャップ」という概念で説明しています。これは、「失敗しても仕方がなかった」と自分を守るために、無意識のうちに“やらない理由”を作ってしまう心理的戦略です。
けれども、動かないことで失うものもある──
「提案していたら通ったかもしれない」「挑戦していたらスキルが身についていたかもしれない」──その“やらなかった後悔”は、実は失敗よりも長く心に残るといいます。
だからこそ、「やらないリスク」も冷静に見極める必要があるのです。
失敗は減らすより、“立ち直る仕組み”を持つ
堀田氏は、行動できる人になるためのカギとして「失敗を受け止める構え」を強調します。
スタンフォード大学のキャロル・ドゥエックが提唱する「成長マインドセット」と同じく、失敗を学びの一部と捉える姿勢が、行動力を育てます。
脳科学的にも、失敗した時こそ脳が最も学習を促進する状態になることが分かっています。
つまり、挑戦と失敗を繰り返すことで、私たちは行動する筋肉=自己信頼を鍛えていけるのです。
感情を味方につける「リフレーミング」と「リアプレイザル」
落ち込んだりやる気が出ない時、感情を無理に消そうとするよりも、“捉え方を変える”ことが有効です。
たとえば、雨の日を「出かけられない」と嘆く代わりに、「読書や映画にぴったりの日」と考えてみる。
こうした視点の転換をリフレーミングと呼びます。
また、「失敗した自分=ダメ」と思う代わりに、「あの経験が今の自分を支えている」と意味づけを変えるのがリアプレイザル。
堀田氏は、これらの心理技術を使うことで、ネガティブ感情を“行動エネルギー”に変えられると説いています。
目標は「スモールステップ」で設定する
「大きな夢を掲げよう」とよく言われますが、実はそれが行動を妨げることもあります。
脳は“達成できそうにない”目標に対して、やる気を失いやすいのです。
そのため、堀田氏は**小さな成功体験を積む「スモールステップ」**を推奨しています。
たとえば、「毎日30分運動する」はハードルが高くても、「玄関で靴を履く」なら誰でもできます。
小さな一歩が積み重なれば、やがて大きな変化につながる──。
このシンプルな仕組みを理解するだけでも、行動へのハードルが一気に下がります。
「やる気を出す」より、「とりあえず動く」
多くの人は「やる気が出たら動こう」と考えますが、実際はその逆。
最新の脳科学では、「動くからやる気が出る」ことが実証されています。
たとえば、10分間の階段昇降をしただけで集中力とモチベーションが上がるという研究もあります。
つまり、“やる気がなくても体を動かす”ことで、脳が後から追いついてくるのです。
本書のタイトル「とりあえずやってみる技術」は、まさにこの科学的真理を端的に表しています。
成長には「リスク」ではなく「コスト」が必要
行動をためらう理由に、「リスクがあるから」という言い訳があります。
しかし堀田氏は、それは本来「リスク」ではなく「コスト」だと指摘します。
資格の勉強に時間をかけることや、新しい環境に慣れる努力は、損失ではなく“未来への投資”です。
「やらない理由」を探すより、「どんなコストを払えば成長できるか」を考える──。
この視点に変えるだけで、行動に対する抵抗がぐっと減るはずです。
まとめ:行動できないあなたへ、「脳を味方につける」一冊
『とりあえずやってみる技術』は、自己啓発書にありがちな精神論ではなく、**科学的な裏づけに基づいた“行動の教科書”**です。
「動けない自分」を責める必要はありません。脳の仕組みを理解すれば、あなたも自然と一歩を踏み出せます。
小さな一歩が、大きな変化の始まり。
この本は、その“最初の一歩”をやさしく後押ししてくれる一冊です。
おすすめ読者:
- やる気が出ない自分に悩んでいる人
- 行動したいのに先延ばししてしまう人
- 科学的根拠のある自己啓発を求めている人
