新渡戸稲造『世渡りの道』に学ぶ——上司と部下は「惜しむ気持ち」をもて
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Taka Knowledge Output
ストア派の哲学者エピクテトスは『語録』でこう忠告しました。
「何より、心に浮かぶ印象に押し流されないように。印象に向かってこう言ってやりたまえ。『君、ちょっと待って。君が何者でどこから来たのか確かめたい。君を調べさせてくれ』……」
これは、私たちが無意識に抱く「第一印象」や「直感」に対する姿勢を示しています。
人間の脳は、一瞬にして状況を把握し、決断を下すことができます。マルコム・グラッドウェルの著書『第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい』が示すように、その判断は多くの場合、長年の経験と知識に裏打ちされたものです。
こうした能力は、生命を守るための力でもあります。
一方で、この「瞬時の判断」は偏見や思い込みの温床にもなります。
つまり、直感は私たちの強みであると同時に、弱点でもあるのです。
エピクテトスは印象を無批判に信じるのではなく、「確かめよ」と言いました。
次のような問いかけを自分にしてみると、思い込みに流されにくくなります。
こうして立ち止まることで、冷静に事実と解釈を分け、偏った判断から距離を取ることができます。
ロシアのことわざに「信じよ、だが確かめよ」があります。これは盲目的に疑うのではなく、信頼と確認を両立させる姿勢を表しています。
このバランスこそ、エピクテトスの示した「印象に支配されない生き方」に通じます。
第一印象や直感は、私たちに素早い判断を与えてくれます。しかし、それに流されると誤った道に進む危険があります。
エピクテトスの言葉を現代風に言い換えるなら、
「直感は信じてもいい。だが、そのまま鵜呑みにせず、必ず確かめよ。」
この姿勢を日々の習慣にすることで、私たちは印象を敵ではなく、味方として使うことができるのです。