ローマ皇帝マルクス・アウレリウスは『自省録』にこう記しました。
「朝起きたらまず、自分にこう言い聞かせるがよい。今日一日、でしゃばりや、恩知らずや、自分勝手な奴や、嘘つきや、嫉妬深い者や、気むずかしい者に出くわすことだろう、と。」
これは「嫌な人に出会うのは避けられない」という現実を前提としたうえで、心を乱されない準備をしなさいという教えです。
人生にヒキガエルはつきもの
18世紀のフランスの劇作家ニコラス・シャンフォールはこんなジョークを残しました。
「毎朝、ヒキガエルを一匹のみ込めば、その日一日どんな嫌なことにも耐えられるだろう。」
つまり、朝のうちに「嫌なことは必ず起こる」と覚悟してしまえば、日中どんな不快なことに遭遇しても「想定内」として受け止められる、という比喩です。
嫌な人、自分勝手な態度、理不尽な出来事――これらはまるで“ヒキガエル”のように、私たちの日常に突然現れます。
心構えがあれば、動揺しない
マルクス・アウレリウスが強調するのは、「嫌な人々の存在を消し去れ」ということではありません。
むしろ、彼らに出会うのは避けられない現実だと認め、そのうえでこう言うのです。
「彼らによって自分が損なわれることはなく、醜いことに巻き込まれることもない。」
つまり、相手の言動によって自分の価値や人格が傷つくわけではない。心を乱すかどうかは、常に自分の選択にかかっているのです。
忍耐と広い心を養う方法
では、どうすれば嫌な人や出来事に心を奪われずにすむのでしょうか?
- 朝に心構えをつくる
「今日は必ず嫌な人に会う」と先に想定しておく。 - 相手の無知を理解する
彼らは善悪の区別を知らない“病”にかかっている、と考える。 - 共通点を思い出す
彼らも自分と同じ人間であり、同胞である。 - 巻き込まれない
相手の態度に反応して同じレベルに下りない。理性と徳を守る。
まとめ ― 朝の「ヒキガエル」が一日を救う
嫌な人や出来事は、私たちがどんなに避けようとしても必ず現れます。
だからこそ、マルクス・アウレリウスのように朝から心を準備し、シャンフォールのジョークのように「ヒキガエルを飲み込む」覚悟をしておくことが大切です。
そうすれば、一日の中で出会う理不尽さも動揺を生まず、忍耐と広い心を持って対応できるようになるでしょう。
心構えは、人生を穏やかにする最初の防具なのです。