情熱に流されず、立場を変えて見直す――『菜根譚』に学ぶ“冷静な視点”の持ち方
「熱中の渦中」にいるとき、人は見えなくなる
『菜根譚』のこの章は、現代の私たちに非常に通じるメッセージを含んでいます。
「冷静になってから、熱狂していた当時のことを振り返ってみると、いっときの情熱に振り回されて動き回っていたことがむだだったと気づく。」
この言葉は、まるで現代社会への警鐘のようです。
SNSや情報の波に乗り、毎日を慌ただしく過ごしていると、
「今これをやらなければ」「チャンスを逃してはいけない」と心が急き立てられます。
そのときは確かに“やる気に満ちている”ように感じます。
しかし、時間が経って振り返ると――
「なぜあんなに焦っていたんだろう?」
「結局、空回りしていただけだった」
と気づくことがあるのです。
『菜根譚』は、その瞬間の熱狂や興奮の中で、
人は物事の本質を見失いやすいと教えています。
「情熱」は尊いが、暴走すると盲目になる
情熱は人生を動かす原動力です。
しかし、方向を誤れば、自分を追い詰めるエネルギーにもなります。
菜根譚が伝えたいのは、情熱を消すことではなく、
一度冷静な視点に立ち返る大切さです。
たとえば、仕事で新しいプロジェクトに夢中になっているとき。
周囲の意見が耳に入らず、
「自分のやり方が正しい」と信じ込みやすくなります。
でも、少し時間を置いて客観的に見ると、
無理をしていた部分や、改善できる点が見えてくる。
立場を変えて眺めることが、次の成長への鍵になるのです。
「静けさの中」で見える、本当の豊かさ
『菜根譚』は続けてこう語ります。
「心の休まる暇もないくらい多忙な状態が一段落し、少し自分の静かな時間を持つことができると、そこで初めて心静かにゆとりを持って生活することのよさを実感できる。」
忙しさの中にいると、
「休むこと=怠けること」と感じてしまう人も少なくありません。
ですが、静かな時間を取ることで初めて、
「ゆとりある生活のありがたさ」に気づけるのです。
それは、仕事を離れてぼんやりコーヒーを飲む時間かもしれません。
スマホを手放し、空を眺める数分でもいい。
静けさは、冷静さを取り戻すための栄養です。
一度立ち止まることで、
自分がどこに向かっていたのか、何を大切にしたかったのかを思い出せます。
「立場を変える」ことで、見える世界が変わる
『菜根譚』が説く「立場を変えて物事を見てみる」とは、
単に“視点を変える”ということではありません。
それは、一歩下がって自分を俯瞰する力です。
熱中していたときには見えなかったことが、
距離を置いた瞬間にクリアに見えてくる。
たとえば――
- 仕事では「数字」ばかり追っていたけれど、
冷静に見ると「人の信頼」が一番の資産だったと気づく。 - 多忙な日々を抜けたあとで、
家族や健康の大切さを実感する。
立場を変えるとは、
**“過去の自分を客観的に見直す勇気”**でもあります。
現代に活かす「俯瞰の習慣」
では、どうすれば『菜根譚』の教えを日常に生かせるでしょうか?
次の3つの習慣がヒントになります。
🌿 1. 一日の終わりに「自分を外から見る」
夜、寝る前に「今日の自分」を第三者の目線で振り返ってみましょう。
「焦っていた」「感情的になっていた」と気づくだけで、心が整います。
☀️ 2. 定期的に「立ち止まる時間」をつくる
週に一度、何もしない時間を10分でも取る。
その沈黙が、次の行動の質を高めます。
🌙 3. 逆の立場に立って考える
意見の違う人がいたら、「もし自分が相手ならどう思うか?」と考える。
立場を変えることは、理解力を深める第一歩です。
おわりに:情熱も冷静さも、両方があってこそ人生
『菜根譚』の「立場を変えて物事を見てみる」という言葉は、
単なる“冷静さのすすめ”ではありません。
それは、情熱と静けさのバランスを取る生き方です。
熱くなって動く時期があるからこそ、
冷静に振り返る時間が尊く感じられる。
そして、その両方を経験した人だけが、
人生の深みを知ることができるのです。
💡まとめ
- 熱中しているときほど冷静さを失いやすい
- 静けさの中にこそ、本当の豊かさがある
- 立場を変えて物事を見直すと、成長のヒントが見つかる
- 情熱と冷静さを往復することで、人は成熟する
