「見る力」が人を育てる——菜根譚に学ぶ、まわりをよく見る心の余裕
私たちは日々、多くの情報や意見に囲まれて生きています。
SNSを開けば、新しいトレンドや考え方が次々と流れてきますし、職場でも「これが正解だ」と言わんばかりの主張にあふれています。
しかし、そんな中で本当に大切なのは——**「まわりをよく見る力」**です。
中国の古典『菜根譚(さいこんたん)』は、その重要性を端的に表した一節を残しています。
「目新しく風変わりなものばかりに飛びついてしまう人は、深い見識に欠けている。
まわりの意見に耳を貸さず、ひたすらわが道を突っ走る人は、最終的に志を全うすることができない。」
これは、「流行や自己中心的な考えに流されることの危うさ」を戒める言葉です。
現代にも通じる、“視野の広さ”と“柔軟な姿勢”の大切さを教えています。
■ 「新しいもの」に惹かれる心理の落とし穴
私たちは本能的に「新しいもの」「珍しいもの」に惹かれます。
最新のガジェット、新しい働き方、話題の自己啓発法……。
新しさには魅力がありますし、刺激を与えてくれることも事実です。
しかし、『菜根譚』はそこに一つの警鐘を鳴らしています。
「新しさばかり追う人は、深い見識を持てない」
流行を追うことに夢中になると、自分の価値観や判断基準が育たなくなります。
一見前向きに見えても、“外からの刺激”に支配されてしまうのです。
新しいことを取り入れるのは良いことですが、
それを「自分の中でどう活かすか」を考えなければ、単なる“情報コレクター”で終わってしまいます。
■ 「わが道を行く」だけでは見えないものがある
もう一つの戒めは、「他人の意見に耳を貸さない人」についてです。
『菜根譚』は言います。
「まわりの意見に耳を貸さず、ひたすらわが道を突っ走る人は、志を全うできない。」
つまり、頑固さや自己過信は、成長を止めてしまうということ。
たとえば、ビジネスの世界でも、「自分のやり方こそ正しい」と思い込み、他人のアドバイスを無視する人ほど、失敗を繰り返します。
また、リーダーがチームの声を聞かずに突っ走ると、いつか孤立してしまうものです。
信念を持つことは素晴らしいことですが、それは「耳を閉ざすこと」とは違います。
柔軟に他者の意見を受け入れる強さがあってこそ、信念は磨かれていくのです。
■ 「まわりをよく見る」ための3つの実践ヒント
- 新しい情報を得たら、まず一晩寝かせる
興奮してすぐに飛びつくのではなく、一晩置いて自分の頭で整理する。
「本当に必要か」「自分に合っているか」を考えることで、冷静な判断ができます。 - 反対意見をあえて探してみる
同じ意見の人ばかりと話していると、思考が偏ります。
あえて自分と異なる立場の意見に触れることで、視野が広がります。 - “まわり”を見るのは、人だけではない
自然の流れ、社会の変化、自分の心の動き——
周囲には常にヒントが隠れています。
意識を少し外に向けるだけで、人生の見え方が変わります。
■ 「見る力」は、深さと余裕を生む
『菜根譚』が伝える「まわりをよく見る」とは、単に“観察する”ということではありません。
それは、物事を多面的に捉える力、そして自分を客観的に見る力でもあります。
たとえば、冷静に人の意見を受け止められる人は、常に柔軟で成長し続けます。
反対に、自分の考えに固執している人ほど、変化に対応できず、次第に孤立していきます。
「よく見る」とは、「すぐに判断しない」ことでもあります。
一歩引いて状況を見つめ直す余裕が、真の見識を生むのです。
■ まとめ:深く見る人ほど、遠くまで進める
- 新しさばかり追うと、深い理解を失う
- 他人の意見に耳を傾けることで、自分の軸が磨かれる
- 「見る力」は、人生を豊かにし、失敗を減らす
『菜根譚』のこの一節は、現代社会のスピードに流される私たちへの警鐘です。
焦らず、立ち止まり、まわりを見渡す——
そのひと呼吸が、人生を大きく変えるきっかけになります。
今日も少しだけ、意識して“まわりを見る”。
それだけで、見えてくる世界がきっと変わります。
