初心に返る力と引き際の見極め方──『菜根譚』に学ぶ、成功と停滞を分ける思考法
初心に返るとは、原点を見つめ直すこと
『菜根譚』の中にある「初心に返る、行く末を見極める」という言葉は、現代社会にも深く通じる教えです。
「事業に行き詰まったときは、まず初心に返れ」とありますが、これは単に過去を振り返るという意味ではありません。自分がその事業を始めた“原点の想い”をもう一度確認することです。
多くの人は、事業や仕事が進むにつれて「効率」や「利益」を優先しがちです。その結果、当初の理念や目的を見失い、「なぜこの仕事をしているのか」が曖昧になってしまう。
この状態では、いくら努力しても軸がブレたままです。成果が出ないときほど、一度立ち止まり、「最初に何を目指していたのか」「誰のための仕事だったのか」を思い出すことが必要なのです。
初心に返ることは、軌道修正のきっかけを与えてくれます。たとえば、顧客満足を第一に掲げていた会社が、いつの間にか利益追求に偏っていたと気づいたら、その瞬間こそ再出発のチャンスです。原点を再確認することで、再びエネルギーが湧き上がってくるのです。
成功したときこそ、次を見極める冷静さを
一方で『菜根譚』は、事業が成功したときには「行く末をよく見極めよ」とも説いています。
成功は喜ばしいものですが、同時に“慢心”や“油断”を生みます。人は成功体験に酔うと、変化への感度が鈍り、環境の変化に気づかなくなるのです。
歴史を振り返ると、繁栄を極めた組織が衰退していく背景には、往々にして「引き際を誤った」ケースが多く見られます。
どんなに順調なときでも、未来を冷静に見通す力がなければ、持続的な成長は望めません。
「行く末を見極める」とは、現状維持に甘んじず、「次に何が起こるか」を考える姿勢を持つことです。
市場の変化、顧客の価値観、チームのモチベーション──それらを丁寧に観察し、「今の成功が続く条件は何か」「どこで一度リセットすべきか」を見定める冷静さが、真のリーダーシップにつながります。
引き際を決める勇気が、次の成功を生む
「自らの引き際を決めることが肝要だ」との言葉は、一見すると消極的に聞こえるかもしれません。
しかし、実際には“退く”という選択こそが、次のステージへ進むための最も戦略的な行動です。
たとえば、あるプロジェクトがピークを迎えたとき、「今やめたらもったいない」と感じることがあります。
ですが、引き際を見誤ると、成果が下がり、チームが疲弊し、最終的には信頼すら失う結果になりかねません。
「まだできる」と思えるうちに、あえて手を引く。その潔さが、次の挑戦への余力を残し、結果的に新しい成長のサイクルを生み出します。
これはビジネスだけでなく、キャリアや人間関係にも当てはまる普遍的な真理です。
現代ビジネスに生きる『菜根譚』の知恵
『菜根譚』は、400年以上前の中国・明代に書かれた思想書ですが、その内容は現代のマネジメントや自己成長にも通じるものばかりです。
ビジネスの世界では、常に「変化」と「安定」のバランスを取ることが求められます。行き詰まったときには原点に返り、成功したときには未来を見極める。
この両輪がそろって初めて、持続的な成長が可能になります。
まとめ:原点と未来、どちらも見つめる経営者であれ
『菜根譚』のこの一節は、現代を生きる私たちにこう語りかけています。
「苦しいときこそ原点に返れ。そして、うまくいっているときこそ次の一手を見極めよ。」
仕事や事業において、上り坂も下り坂も避けて通ることはできません。
だからこそ、どちらの時期にも“心を整える視点”を持つことが重要なのです。初心に返ることで軌道を修正し、未来を見据えることで停滞を防ぐ。
そのバランスを保てる人が、長く信頼されるリーダーになっていくのだと思います。
次の挑戦へ進むために、一度立ち止まってみませんか。
“初心に返り、行く末を見極める”──その姿勢が、きっとあなたの未来をより確かなものにしてくれるはずです。
