自己啓発

つまらないことをきちんと行う|幸田露伴『努力論』に学ぶ、“凡事徹底”が人を高める理由

taka

「つまらないこと」をおろそかにしていないか?

幸田露伴『努力論』の終盤に登場するこの章「つまらないことをきちんと行う」は、
彼の思想の集大成ともいえる教えです。

露伴はこう述べます。

「凡愚は、つまらないことなどどうでもよいなどと、
実際にはそんなつまらないことさえできないくせに威張っているが、
聖人はつまらないこともできる上に、しかも謙虚だ。」

ここでいう“つまらないこと”とは、
掃除、挨拶、約束を守る、片づける、時間を守る——といった、
一見地味で誰にでもできるような行為を指します。

しかし露伴は、「誰にでもできることを、誰よりもきちんと行うこと」こそが人格を磨く基礎だと断言します。


聖人と凡人の違いは「小さなこと」への姿勢にある

露伴は、聖人と凡人の差を「大きな能力」ではなく、
小さなことを軽んじない姿勢の差だと指摘します。

「聖人でさえ、つまらないことに全身全霊で取り組んでいるのに、
凡愚が全身全霊で取り組まないなら、うまくいくはずがない。」

つまり、天才や聖人と呼ばれる人ほど、
誰も見ていないような小さな行いを丁寧に積み重ねている。

逆に、凡人ほど「こんなこと意味がない」と手を抜きたがる。
この「小事を軽んじる心」が、努力の根を枯らしてしまうのです。

露伴の時代も現代も、この本質は変わりません。
むしろ現代は、「効率」「スピード」「見栄え」が重視され、
地味なことを軽視する傾向が強まっています。

しかし、露伴は断言します。
つまらないことをおろそかにする者は、結局すべてを失う。


「敬」とは、小さなことに魂を込めること

露伴は、つまらないことに全力で取り組む姿勢を
儒教の概念である「敬(けい)」という言葉で表現します。

「こうした物事に全身全霊で打ち込むことを、儒教で『敬』というのだ。」

「敬」とは、
物事を丁寧に扱う、心を込める、粗末にしない、という意味。
つまり、“小事に魂を込める”という生き方そのものです。

掃除をするにも、心を込めて一筆一拭きする。
挨拶をするにも、相手を敬う心で行う。
それが「敬」の実践であり、露伴のいう“真の努力”です。

小さな行動を“儀式のように丁寧に行う”こと。
それが、日常に神聖さを生み、
やがて大きな徳と成功を育てると露伴は説きます。


「全身全霊」で取り組むと、世界が変わる

露伴はさらに続けます。

「どのような結果になるのか自分で実感することが大切だ。
そうすれば、全身全霊で取り組むことがいかによい結果を生むかということが
自分自身の体験としてわかるようになる。」

つまり、露伴は“理屈ではなく体験で学べ”と言っているのです。

一度でも、「小さなことを全力でやった結果の達成感」を感じると、
その感覚が「努力の喜び」として体に刻まれる。

そこから人は自然と、瞬間瞬間を丁寧に生きる人間へと変わっていくのです。

露伴は、この“経験による悟り”を大切にしました。
本を読んで知識を得るよりも、
実際に手を動かし、心を込めて行うことでしか得られない“気づき”がある。
それこそが、努力の真髄だと説いているのです。


現代に生きる「つまらないこと」の価値

私たちの生活の中にも、「つまらないこと」は無数にあります。

  • ゴミを分別して捨てる
  • デスクを毎日片づける
  • 約束の時間を守る
  • メールの一文を丁寧に書く
  • 靴をそろえる

どれも地味で、すぐには結果が出ません。
しかし、これらを丁寧に積み重ねることで、
“信頼”や“信用”という目に見えない財産が育っていきます。

露伴が言う「つまらないことをきちんと行う」とは、
信頼を積み重ねる生き方でもあるのです。


「つまらないこと」を極める3つの実践法

露伴の教えを現代に活かすには、
以下の3つのステップで“凡事徹底”を意識するとよいでしょう。

  1. 小さな行動を「敬意」をもって行う
     掃除・整理・約束などを、心を込めて行う。
     「誰も見ていないところで丁寧に生きる」が鍵です。
  2. 「当たり前」を習慣にする
     小事を継続することで、人格の土台が固まる。
     継続そのものが努力の証です。
  3. 結果より“心の変化”を味わう
     「小さな行動を丁寧に行うと、自分が穏やかになる」
     この感覚を日々味わえば、自然と生活の質が上がります。

成功とは、「小事の積み重ね」が形になったもの

露伴は、努力や成功を“奇跡”とは考えませんでした。
彼にとって成功とは、小さな努力の蓄積が形になった結果です。

「全身全霊で取り組むことがいかによい結果を生むかということが
自分自身の体験としてわかるようになる。」

小事に魂を込めることが、やがて大事を成す。
この“凡事徹底の哲学”こそ、露伴が伝えた努力の核心です。

大きな夢を叶えたいなら、まず足元の「小さなこと」を整える。
それが、露伴流の成功法則なのです。


まとめ:小さなことに“敬意”をこめて生きる

幸田露伴の「つまらないことをきちんと行う」は、
現代社会における“誠実さ”の原点を教えてくれます。

  • 聖人は小さなことにも全身全霊を尽くす。
  • 凡人は小さなことを軽んじて失敗する。
  • 「敬」の心で日常を生きることで、人は磨かれていく。

つまらないことを丁寧に積み重ねる人ほど、
人生の大切な場面で強く、柔らかく、そして美しく輝く。

露伴の言葉は、100年を経た今も変わらず、
“小さな努力の尊さ”を生きる人の支えとなるのです。

スポンサーリンク
ABOUT ME
TAKA
TAKA
理学療法士/ビール
理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。
スポンサーリンク
記事URLをコピーしました