自己啓発

利益を独占すれば利益を失う|幸田露伴『努力論』に学ぶ“分け合う経営と人望の法則”

taka

利益を独占する人は、やがて孤立する

人は得た利益を独り占めしたくなるものです。
自分が頑張った分、自分の取り分を増やしたい――そう思うのは自然なこと。

しかし、幸田露伴は『努力論』で、そんな考えに真っ向から警鐘を鳴らします。

利益を独占すれば利益を失う。

この言葉は、単なる道徳論ではなく、
人間の本質と経済の原理に基づいた実践的な教えです。

露伴は、商店の主人と従業員の例を挙げながら、
“利益を分け合う者が最終的に最も利益を得る”という法則を説いています。


利益を「分ける」経営は、信頼を生む

露伴はこう述べます。

主人が自分の利益を従業員に分け与えたとするならば、
従業員たちは主人の利益を自分の利益と考え、より一層働くだろう。

この構図は、現代の組織経営にもそのまま通じます。

リーダーがチームの成果を公平に分配し、
仲間と一緒に喜び、感謝を示すとき――
人は「この人のために頑張ろう」と思える。

利益を分けることは、単にお金を分けることではなく、
「信頼」と「モチベーション」を共有することなのです。


利益を独り占めするリーダーが失うもの

一方、露伴はこうも警告します。

利益を独り占めして従業員に分け与えない場合、
従業員は主人の利益がどうなろうと関心を持たなくなる。

たとえ給与が支払われていても、
「自分は搾取されている」と感じた瞬間、人は心を閉ざします。

結果として、
・意欲が下がる
・創意工夫がなくなる
・チームの士気が落ちる
という悪循環が起こるのです。

露伴の指摘は、100年以上経った現代の経営心理学でも証明されています。
“心理的報酬”――つまり「自分が貢献している実感」こそが、
人を動かす最大の原動力なのです。


「分福」の精神が利益を生む

露伴が説いた“分け合う”生き方は、
彼のもう一つの思想――**「分福(ぶんぷく)」**と深く関係しています。

分福とは、

自分が得た福(幸せ・恵み)を人に分け与えること。

惜福(福を大切に守る)よりも一歩進んだ、
“福を循環させる”積極的な行為です。

利益も同じ。
独り占めして閉じ込めると停滞しますが、
人に分け与えれば、信頼と協力という形で返ってくる。

つまり、**利益とは“循環させることで増えるもの”**なのです。


現代のビジネスにも通じる露伴の知恵

露伴のこの考え方は、今でいう「サステナブル経営」や「共創」の原点でもあります。
実際、現代の優良企業の多くは「利益の分配」を明確に掲げています。

  • 社員への成果還元
  • 顧客や社会への貢献
  • 投資家・取引先との信頼関係

これらはすべて、“利益を分けることで利益を育てる”考え方です。

露伴の時代には「商いの道徳」として語られたこの思想が、
今では**「持続的な経営の戦略」**として再評価されています。


「分け合う」ことでしか、人も利益も育たない

露伴の言葉を、現代の組織に置き換えるなら、こう言えます。

利益を独り占めするリーダーは、一時的な成功者。
利益を分け合うリーダーこそ、長く信頼される成功者。

人のやる気は「評価」ではなく「共感」によって生まれます。
共感があって初めて、人は自発的に力を発揮する。

だからこそ、
“人に与えることができる人”が、
結果として最も多くの利益を手にするのです。


露伴が伝えた「利益の本質」

『努力論』に込められたこの章の核心は、
「利益とは、与え合う関係の中でしか育たない」ということです。

露伴は言葉を選びながら、静かにこう諭しています。

利益を分ければ信頼を得、信頼はやがてさらなる利益を生む。
利益を独占すれば人心を失い、利益そのものをも失う。

これは商人だけでなく、
上司、教師、親、リーダー――あらゆる立場の人に当てはまる法則です。


まとめ|「分ける勇気」が繁栄を生む

幸田露伴『努力論』の「利益を独占すれば利益を失う」は、
100年前に書かれたにもかかわらず、今なお通用する“人間経営の法則”です。

利益は独占するほど減り、分けるほど増える。

それは、単なる経済の話ではなく、信頼と人望の話
人を思いやり、共に繁栄しようとする心にこそ、
本当の「利益」は宿るのです。

今日から少しだけ、自分の成果や幸せを“分ける勇気”を持ってみましょう。
その一歩が、あなた自身の新しい福と成功を呼び込むきっかけになるはずです。

スポンサーリンク
ABOUT ME
TAKA
TAKA
理学療法士/ビール
理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。
スポンサーリンク
記事URLをコピーしました