仲のよい夫婦はなぜ健康なのか──幸田露伴『努力論』が語る、愛と健康の深い関係
仲のよい夫婦は健康だ
幸田露伴は『努力論』の中で、人間の健康を支えるものとして“愛情の力”を挙げています。
彼の言葉は、単なる医学的視点ではなく、人と人との関係が健康に与える深い影響を見抜いたものでした。
「病気にかからないためには、まず第一には自分自身の健康管理に努力することが大切だ。」
この言葉から始まり、露伴は“個人の努力”を出発点にしながらも、
やがて“人とのつながり”こそが健康を支える基盤であると説いていきます。
健康は「一人の努力」だけでは保てない
健康のために努力する――
それは現代でも当然のこととして語られます。
しかし、露伴はこう続けます。
「自分一人の力では自分の健康すら維持できないのが現実だから、そうした努力をするにしても、単独で行うよりも皆と力を合わせてやるほうが、より成功の可能性が高くなるだろう。」
私たちはつい、「健康管理=自己責任」と考えがちです。
けれども露伴は、人の健康は社会的な支えの中でこそ守られると見抜いていました。
家族や友人、同僚――
互いに支え合う関係があることで、心は安定し、行動も整っていく。
健康とは、単に身体の問題ではなく、人間関係の質が生み出す心身の調和なのです。
仲のよい夫婦は、自然と健康を支え合う
露伴は特に、「夫婦の関係」にその理想を見ています。
「実際、世の中を見てみれば、仲のよい夫婦はお互い健康である例が多い。」
なぜ、仲の良い夫婦は健康なのか。
露伴はその理由を、非常に人間的な観察によって説明します。
「お互いのことをよく観察しているため、お互いに何か異変があったときに発見しやすいからだ。」
つまり、愛情の目は健康のセンサーでもあるのです。
「最近顔色が悪いね」「食欲がないみたい」「ちょっと休んだら?」
そんな一言や小さな気づきが、病気の早期発見や生活リズムの改善につながります。
愛情は、医学的な治療とは違うけれど、確かに健康を守る力を持っているのです。
愛情の欠如が、病の隙を生む
露伴はさらにこう続けます。
「不幸にして夫婦のどちらかが欠けた場合、あとに遺された人が健康を害する例が世の中には多い。」
この観察は、現代の医療・心理学研究でも裏づけられています。
たとえば、配偶者を亡くした人がうつ症状や免疫低下を起こしやすくなる「ウィドウ効果(widowhood effect)」は、科学的にも実証されています。
露伴は、その理由をこう解釈します。
「それまで愛情深く自分の健康を見守ってくれた人がいなくなったために、病魔が侵入する隙を与えてしまう。」
つまり、愛されることによって心の防衛力が高まっていたのです。
誰かに見守られているという安心感は、ストレスを和らげ、免疫力を支える。
愛情は、目に見えない“最強の薬”といっても過言ではありません。
健康とは、愛の共同作業である
露伴の言葉を現代風に言い換えるなら、こうなります。
「健康は、二人で築くチームワークの成果である。」
夫婦に限らず、パートナーシップや家族、友人との関係にも同じことが言えます。
人が人を思いやることで、
- 規則正しい生活が自然と身につく
- ストレスが減り、免疫が高まる
- 困ったときにすぐに助けを求められる
こうした積み重ねが、健康の基盤となります。
露伴は、健康を「個人の努力」に閉じ込めず、
**愛情と絆によって守られる“共同の成果”**として捉えていたのです。
「心の健康」を守ることが、最良の予防
露伴の思想は、単に体の健康にとどまりません。
彼が言う「仲のよい夫婦は健康だ」という言葉の裏には、
心の健康こそが身体の健康を導くという考え方があります。
愛情に満ちた関係の中では、孤独や不安が少なく、
前向きな気持ちで毎日を過ごすことができます。
心が穏やかであれば、体の回復力も上がる。
反対に、愛情の欠如やストレスは、どんな薬よりも健康を蝕むのです。
まとめ:愛情は最高の健康法
幸田露伴の「仲のよい夫婦は健康だ」は、
「健康とは、愛すること・愛されることの中にある」
という人間理解に満ちた一節です。
- 自分の健康を守る努力を怠らないこと。
- そして、身近な人の健康にも心を配ること。
- 愛情を通じて支え合うことが、真の健康をつくる。
露伴は、“愛と努力の連動”を見抜いていました。
努力は自分を支え、愛はその努力を温かく包み込む。
「健康は、一人で築くものではなく、二人で育てるもの。」
この露伴の言葉は、現代の私たちにとっても変わらぬ真実です。
