自己啓発

「今やっていること」に心を込める──幸田露伴『努力論』に学ぶ、一事一物主義の力

taka
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今していることに集中せよ

現代社会では「マルチタスク」が美徳とされがちです。
同時にいくつもの仕事をこなし、SNSを見ながら食事をし、
思考と行動を絶えず切り替えて生きるのが当たり前になっています。

しかし、幸田露伴は『努力論』の中で、それとは正反対の生き方を説いています。

「どんなことであっても、何かをしているときにはそれに集中するという『一事一物主義』を徹底することが大切だ。」

露伴が提唱する「一事一物主義」とは、
ひとつのことを、ひとつの心で行う生き方です。


「一事一物主義」とは何か

「一事一物主義」とは、簡単に言えば「ながら行動をしない」ということです。
しかし露伴の言葉は、単なる作業効率の話ではありません。

「最初のうちは非常に煩わしく感じられるが、慣れてくれば、それほど煩わしさも感じなくなるものだ。」

つまり、これは生き方の修養です。

最初は「ひとつのことに集中する」ことが面倒に感じるかもしれません。
しかし続けるうちに、心の散らかりが減り、
一つひとつの行動が静かに整っていく。

露伴が言う「努力」とは、まさにこの“心の統一”を指しています。


日常の中の「集中の修行」

露伴は、一事一物主義の具体例をこう挙げています。

「たとえば、朝起きる、衣服を着替える、布団をたたむ、雨戸を開ける、電燈を消す、部屋を掃除するというような日常生活の何でもないことを、一つひとつ着実に片づけていくことが何よりも大切なことなのだ。」

露伴の示す「集中」は、特別な修行や瞑想ではありません。
むしろ、日常の中の小さな行動こそが修養の場なのです。

・布団を畳むときは布団に心を向ける
・食事をするときは味に集中する
・掃除をするときは動作の丁寧さに意識を置く

一つひとつの動作を丁寧に行うことで、心が整い、
やがてどんな場面でも集中できる“芯”が育っていきます。


「ながら行動」は心を乱す

露伴がこのように説く背景には、「気の散乱」への警戒があります。

第91節(前章)でも露伴は、

「気が散るのは、するべきことをせず、思うべきことを思わないからだ。」
と述べていました。

「ながら行動」はまさにその典型です。
スマホを見ながら話す、別のことを考えながら食べる――。
一つの行動に心が宿らないと、思考も浅くなり、感情も不安定になります。

つまり、「気が散る生き方」は、
“心の疲労”を生み出す生き方でもあるのです。

露伴が説く「一事一物主義」は、
心を一つの対象に集中させることで、
乱れた気を整え、心身のエネルギーを回復させる実践なのです。


「今」に集中すると、心が静まる

露伴の教えは、現代でいう「マインドフルネス」とも深く通じます。
つまり、「いま・ここ」に意識を向けることです。

過去の後悔や未来の不安に心を奪われず、
いま自分がしていることだけに全力を注ぐ。

たとえば――
・掃除をしているときは、掃除だけをする
・人と話すときは、話す相手に心を向ける
・食べるときは、ただ味わう

この「いまに集中する力」こそが、
心のブレを減らし、充実感を高めていきます。

露伴の言葉は、まるで静かな禅の教えのようです。


小さな集中が、大きな成果を生む

露伴の思想は、一見“地味”に見えます。
しかし、その根底には持続的努力の哲学があります。

どんな偉業も、一瞬の情熱ではなく、
日々の小さな集中の積み重ねによって生まれる。

「どんなことであっても、それに集中せよ。」

露伴は、「大きなことをやる前に、小さなことを丁寧にやれ」と教えます。
なぜなら、小さな集中が積み重なれば、
やがてそれが「生き方の集中力」となり、人生を動かすからです。


現代における「一事一物主義」の実践

露伴のこの教えを、現代の生活に取り入れる方法はシンプルです。

① 朝のルーティンを丁寧に行う

歯を磨く、顔を洗う、服を着る――
これらを「ながら」でなく、一つずつ丁寧にこなす。
これだけで、心のリズムが整います。

② 作業中にスマホを見ない

SNSや通知を見るたびに、心が分断されます。
“今していること”を優先し、余計な刺激を減らしましょう。

③ 「一つ終えてから次へ」を意識する

複数のタスクを同時に抱えるより、
一つずつ完了させる方が、効率も満足感も高まります。


まとめ:集中とは「今を生きる力」

幸田露伴の「今していることに集中せよ」は、

「一つのことを、一つの心でやる」
というシンプルながら深い真理を教えています。

  • 日常の動作を丁寧に行う
  • ながら行動をやめ、今に心を置く
  • 小さな集中を積み重ねる

露伴の言う「一事一物主義」は、
派手な努力ではなく、“心の姿勢”を整える努力です。

「一つの灯を静かに燃やすように、
今していることに、心を込めて取り組め。」

それが、露伴が教える“本当の集中”であり、
人生を整える最も確かな努力のかたちなのです。

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ABOUT ME
TAKA
TAKA
理学療法士/ビール
理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。
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