意見を変えることを恐れない ― エピクテトスに学ぶ謙虚さと学びの姿勢
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Taka Knowledge Output
マルクス・アウレリウスは『自省録』の中で、セックスや食べ物、衣服についてあえて冷ややかな言葉を使って表現しました。
「肉料理は死んだ魚や豚にすぎず、ワインはブドウの汁にすぎない。紫の衣は貝の血で染めた羊毛にすぎず、交合とは陰部をこすり合わせ、粘液を射出する行為にすぎない」
一見すると極端でシニカルな表現ですが、ここにはストア派が実践した「侮蔑表現法(descriptive devaluation)」と呼べる訓練の意図があります。
人間は本能や文化的な刷り込みによって、ある対象を「特別」だと信じ込みます。
しかし、これらを冷静に分解してみると、ただの生物的・物質的現象にすぎません。
このように「飾りを剥ぎ取って見る」ことで、私たちは対象に対する過剰な執着や欲望から解放されるのです。
こうして「ありのままに」対象を見直すことで、理性のバランスを取り戻せるのです。
注意すべきは、この訓練が「世の中を否定的に見るためのもの」ではないということです。
むしろ目的は、必要以上の幻想や欲望から自分を解放し、対象を適切な大きさに見直すことにあります。
つまり、侮蔑表現法はシニシズムではなく、ストア派が重んじた「客観性を保つ技術」なのです。
マルクス・アウレリウスの侮蔑表現法は、華やかさに隠れた本質を見抜くための実践的な知恵です。
私たちも日常の中で、この視点を意識するだけで、心の平静と自由を少しずつ取り戻せるでしょう。