自己啓発

「凝る気」が成長を止める?幸田露伴『努力論』に学ぶ、大局を見る心の磨き方

taka

「張る気」と「凝る気」の違いとは

幸田露伴は『努力論』の中で、人が努力するときに生まれる二つの気、「張る気」と「凝る気」を区別しています。

どちらも「物事に集中する」という点では似ていますが、実は本質がまったく異なります。

  • 張る気(はるき):対象に向かって意識を広く保ちながら、力強く取り組む状態
  • 凝る気(こるき):対象に没頭しすぎて、自分の視野や判断が狭まってしまう状態

つまり「張る気」はエネルギーが外に向かって開かれており、「凝る気」は内側に閉じ込められてしまっているのです。

露伴は、この「凝る気」こそが、人間を成長から遠ざける最大の落とし穴だと指摘します。


「凝る気」に陥るとどうなるのか

露伴はその例として「旅人」と「碁打ち(囲碁を打つ人)」を挙げています。

■ 旅人の例

旅人が道を歩いていて、「この道で間違いない」と思い込み、右も左も見ずにただ突き進んでしまう――
結果的にその道が間違っていた場合、目的地にたどり着けず、後悔することになります。

これはまさに「凝る気」の状態です。
自分の選んだ道に執着するあまり、周囲を見渡す余裕を失ってしまうのです。

■ 囲碁の例

囲碁でも、ある局面にこだわりすぎると、全体の流れを見失ってしまいます。
目の前の一手に集中しすぎて、盤全体を支配する戦略を忘れてしまう。

これが「凝る気」。
一方で、全体を見渡しながら冷静に最適な手を打つ人こそが「張る気」を保っている人です。


現代における「凝る気」の落とし穴

この教えは、現代のビジネスや自己成長にもそのまま当てはまります。

  • 仕事で成果を出すために、目の前のタスクばかりに没頭し、全体の目的を見失う
  • 勉強や研究で一つの分野にこだわりすぎ、他の視点や情報を取り入れられなくなる
  • 趣味や健康法などで「これが絶対」と思い込み、柔軟に考えられなくなる

努力そのものは悪くありません。
しかし、「凝る気」に支配されると、正しい方向へ進んでいるかどうかを確認する視点がなくなるのです。


「張る気」を保つための3つの習慣

① 定期的に立ち止まる

努力の途中で「今、自分はどこに向かっているのか?」を確認する時間を持ちましょう。
一週間ごとや一ヶ月ごとに振り返るだけでも、「凝り」の傾向をリセットできます。

② 他者の意見を受け入れる

「凝る気」が強くなると、人の意見を聞かなくなります。
あえて自分と異なる考えの人に相談したり、フィードバックを求めたりすることで、視野が広がります。

③ 小さな目的ではなく“全体の目的”を意識する

仕事で言えば「この資料を仕上げる」ではなく、「チーム全体で成果を出す」。
勉強なら「この章を覚える」ではなく、「最終的に何を理解したいか」。
常に大きな目的を意識することが、「張る気」を維持する鍵になります。


「凝る気」は努力の副作用

露伴がすごいのは、「凝る気」を“悪”として切り捨てていない点です。
彼はそれを、「努力する人だからこそ陥る状態」だと理解していました。

真面目で熱心な人ほど、「凝る気」にハマりやすいのです。
目の前の課題に没頭するのは立派なことですが、同時に「大局を見失っていないか?」と問いかける必要があります。

つまり、「凝る気」は努力の証であると同時に、次のステージへ進むための“試練”なのです。


大局を見る人が最後に勝つ

現代社会は「スピード」と「集中」が重視されがちですが、露伴の言葉はその逆を教えてくれます。
大切なのは、一点に凝り固まらず、全体を見渡す余裕

それは、戦略家のような広い視野を持ちつつ、実践者として現場でも動ける姿勢です。

「張る気」をもって集中しながらも、視点を上げて全体を俯瞰する。
そのバランスこそが、仕事でも人生でも成功を生むのです。


まとめ

幸田露伴『努力論』の「凝る気は大局を見失わせる」は、現代の働き方や生き方に深く通じる教えです。

  • 「張る気」は集中と広い視野を両立する力
  • 「凝る気」は執着と視野の狭さを生む
  • 定期的な振り返りと他者の意見が、大局観を育てる

努力とは、ただ頑張ることではなく、“正しい方向に力を使うこと”。
そのためには、時に立ち止まり、全体を見渡す勇気が必要です。

今日も「凝る」ことなく、「張る気」をもって歩みましょう。

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ABOUT ME
TAKA
TAKA
理学療法士/ビール
理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。
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