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リハビリがうまくいかない人の特徴とは?整形外科リハで失敗を防ぐための考え方

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リハビリがうまくいかない人の特徴とは?整形外科リハで失敗を防ぐための考え方

リハビリの現場では、同じ疾患・同じ手術を受けても「うまく回復する人」と「なかなか改善しない人」がいます。
この違いは単に手術の精度や病態の重さだけではなく、患者自身の行動や考え方によって生まれることが少なくありません。

本稿では、整形外科リハビリテーションの臨床経験をもとに、リハビリがうまくいかない人の特徴を整理し、その反対に「うまくいく人」になるためのヒントを解説します。


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自己判断で動いてしまう人——最大の落とし穴

リハビリがうまくいかない人の最大の特徴は、医師や療法士の指示を守らず、自分で判断してしまうことです。

特に整形外科手術後では、「痛くないから動かしても大丈夫」「そろそろ装具を外しても平気だろう」といった自己判断が、回復を大きく妨げる要因になります。

例:腱板損傷術後の再断裂

筆者が多く担当している肩の腱板損傷手術では、損傷した腱板(筋肉の腱)を骨に縫い付けて修復します。
この手術では、術後の固定と安静が極めて重要であり、三角巾や装具を装着して肩の動きを制限する期間が設けられます。

ところが、病室を回ると装具を外している患者が意外と多いのです。
中には、シャワーや着替えの際に「少しくらい大丈夫」と思って動かしてしまう人もいます。

結果として、腱板が再び剥がれる「再断裂」を起こすケースが見られます。統計的にも腱板修復後の約1割前後に再損傷が起こるといわれ、その多くが注意事項を守れなかったケースに該当します。


「動かさなすぎ」も「動かしすぎ」もリスクになる

術後のリハビリには、**「安静期」と「可動期」**の二つのフェーズがあります。
安静期(初期):縫合部や骨折部が安定するまで、余計な負荷をかけないことが最優先。
可動期(中期〜後期):癒着や拘縮を防ぐために、適切な刺激を加えて関節可動域を確保する時期。

このバランスを誤ると、リハビリは失敗します。
つまり、「動かさなすぎてもダメ」「動かしすぎてもダメ」ということです。

臨床家の役割は、患者に**「今、なぜこの制限が必要なのか」「次にどのような動きが解禁されるのか」を理解してもらうこと。
単に「動かしてはいけません」と伝えるだけではなく、その
生理学的な根拠**を説明することが患者教育の要です。


指示を守れない背景にある“心理的要因”

「言っても守ってもらえない」――現場でよくある悩みです。
実際、患者が自己判断してしまう背景には、以下のような心理的要因があります。

  • 早く回復したいという焦り
  • 痛みが軽くなり「もう治った」と思い込む過信
  • 装具や安静が生活の不便を強いるストレス
  • 指示内容の理解不足

臨床家はこの「心理的ギャップ」を理解したうえで、患者の行動変容を促す必要があります。
たとえば「腱がくっつくには6週間かかる」「今動かすと縫い付けた部分が再び切れる可能性がある」など、具体的な期間と理由を伝える説明が効果的です。


リハビリを成功させるために臨床家ができること

  1. 初期説明の徹底
     術後初期の「安静の意味」を、図や動画を使って具体的に説明する。
  2. 小さな成功体験を積ませる
     「昨日より腕が少し上がった」「装具を外しても痛みが出なかった」などの進歩を患者に意識させる。
  3. 再損傷のリスクを“脅し”ではなく“理解”として伝える
     不安を煽るのではなく、理論的に納得してもらう。
  4. チームでの情報共有
     医師・看護師・療法士間で指示や経過を統一し、患者に一貫したメッセージを届ける。

まとめ:リハビリの成功は「患者教育」と「信頼関係」から

リハビリがうまくいかない原因の多くは、知識の不足ではなく、理解のズレにあります。
患者が「なぜその動きをしてはいけないのか」「なぜ装具が必要なのか」を理解していないままでは、行動を変えることは難しい。

だからこそ、臨床家にはわかりやすく、根拠に基づいた説明力が求められます。
最終的にリハビリを成功させるのは、患者と療法士の信頼関係なのです。

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ABOUT ME
TAKA
TAKA
理学療法士/ビール
理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。
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