日本経済に迫る供給能力不足とは?サプライロス型インフレの正体
多くの人が悩んでいるので今回はその解決策を一緒に考えていきましょう。最近、日本経済で注目されているのが「供給能力不足」や「サプライロス型インフレ」という現象です。特に2023年第1四半期以降、GDPデフレーター(物価の動向を示す指標)が上昇に転じ、国内で物価上昇が続いています。いったい何が起きているのでしょうか?
緊縮財政とバブル崩壊が引き起こした長期デフレ
日本は1990年代のバブル崩壊、そして1997年の橋本政権による緊縮財政の影響を受け、長く「需要不足」の状態が続きました。バブル期には、企業や個人が借金をして株や土地、ゴルフ会員権などの資産に“投機”を行っていました。価格は上がり続けるという期待から、多くの人がさらなる借金を重ねて資産を購入し、結果的にバブルを膨らませてしまったのです。
しかし、バブルはやがて崩壊。資産価格が暴落しても借金は残るため、国民は所得を借金返済に充てるようになり、消費や投資は冷え込みました。これは「ミクロでは合理的だが、マクロでは悲劇をもたらす」現象、いわゆる「合成の誤謬(ごびゅう)」です。
供給能力の削減とサプライロス型インフレ
1997年以降、需要不足が続いたことで、日本企業は工場を閉鎖し、設備を縮小し、人員も削減していきました。こうして日本は長期的に供給能力を失っていったのです。
そして今、そのツケが回ってきています。GDPデフレーターの上昇は、輸入物価の高騰ではなく、国内の供給能力が総需要を下回ってしまったことが主因と考えられています。これが、筆者が「サプライロス型インフレ」と呼ぶ現象です。
たとえば、農業ではコメの価格が上昇しています。これは単なるコスト増ではなく、長年の減反政策や農家の高齢化による「供給能力の低下」が原因です。政府が備蓄米を放出しても、根本的な供給不足は解決されないのです。
建設業やインフラにも影響が拡大
さらに深刻なのが、建設業の供給能力です。1990年代には60万社あった建設業者数は、現在では47万社に減少しています。2025年1月には埼玉県八潮市で下水管の破裂による道路陥没事故が発生しました。これは象徴的な出来事であり、今後もインフラの老朽化と人手不足による事故が続発する可能性があります。
このままでは、日本は「橋も高層ビルも建てられない国」に転落しかねません。上下水道や発電所、通信インフラの維持すら難しくなる――まさに「発展途上国化」です。
これから求められる政策とは?
今こそ必要なのは、供給能力を回復させるための積極的な政策です。財政支出の拡大、減税、人材育成、インフラ再整備など、総需要と供給能力のバランスを取り戻す対策が不可欠です。
これまで30年近く放置されてきたデフレの影響は、想像以上に深刻です。しかし、正しい政策によって、まだ日本は立て直すことができます。
この情報が皆さんのお役に立てば幸いです。
