日本のインフラが危ない?サプライロス型インフレと建設業の危機
多くの人が悩んでいるので今回はその解決策を一緒に考えていきましょう。
近年、じわじわと進行しているのが「サプライロス型インフレ」。これは、物価上昇の背景に、供給力の低下、つまり“作る力の喪失”があるという現象です。日本は今、その真っただ中にあります。そして、その深刻な影響を最も受けているのが「土木・建設業界」なのです。
公共投資は半分に削減、建設業は瀕死状態
かつては日本経済を支えた公共投資。しかし、ピーク時と比べて現在の「公的固定資本形成(公共投資の指標)」はなんと約半分にまで縮小されています。しかも、政府は談合の禁止や一般競争入札の導入など、土木・建設業界にとって厳しい規制を進めてきました。
これにより、地域の建設会社は次々に廃業。かつて60万社あった建設業許可業者数は、現在では47万社に減少しています。さらに、建設業に従事する人の数は1997年をピークに減り続け、2024年には477万人、技能者は303万人と大幅に減っています。
「談合=悪」ではなかった?地域を守る知恵だった
日本では「談合」と聞くとネガティブな印象を持つ人が多いかもしれませんが、実は、かつての「指名競争入札+談合」の仕組みは、災害大国・日本にとって非常に合理的なものでした。
地元の建設会社が元気であれば、災害が起きたときにすぐに駆けつけ、復旧作業にあたることができます。しかも、彼らは地域の地形やインフラをよく理解しており、自衛隊ですら及ばない「現場力」を持っているのです。
談合は、そうした企業同士が極端な競争で共倒れしないように「仕事を分け合い」、各地域に業者を存続させるための“知恵”でした。完全な市場競争にすると、負けた業者は倒産し、その地域から建設業が消えてしまう。それでは、災害のたびに命を守る手段がなくなるのです。
サプライロス型インフレが意味する未来
インフラの供給力が弱まり、価格は上がるけれども、必要な工事は進まない。これが、いま進行中の「サプライロス型インフレ」です。特に土木・建設分野ではその影響が顕著で、老朽化したインフラのメンテナンスすら難しくなりつつあります。
水道、電気、道路、橋――すべて私たちの生活に欠かせない基盤です。いま、当たり前のように使っている水道も、数十年後には「蛇口をひねっても水が出ない」事態が現実になるかもしれません。
将来世代へのツケを止めるには?
日本はこれからも自然災害と付き合っていかなければなりません。そのためには、地域に根差した建設業者を守り、供給能力を維持・強化していくことが必要です。公共投資の見直し、地域分散型の入札制度の再評価など、いまこそ政策の方向転換が求められています。
「規制緩和」という言葉のもとに進められてきた政策が、じつは日本の基盤を壊してしまった。いまこそ、“本当に必要な競争”と“守るべき供給力”を見極め、次世代へ安全な社会インフラを引き継ぐための行動が必要です。
この情報が皆さんのお役に立てば幸いです。
