感情にも「レベル」がある?幸田露伴『努力論』に学ぶ、人間力を高める感情の磨き方
感情にも「レベル」があるという気づき
私たちは「知識にはレベルがある」ということを自然に理解しています。
勉強や経験を積めば知識が深まり、より正確で幅広い判断ができるようになります。
しかし、幸田露伴は『努力論』の中で、**「感情にもレベルがある」**ことを指摘しています。
知識の深浅だけでなく、「感情の質」にも高低がある。
それは、普段の生活ではあまり意識されない視点かもしれません。
粗雑な感情と精緻な感情の違い
露伴はこう述べています。
Aの感情が精緻で、Bの感情が粗雑であれば、Bの感情はAよりも低いレベルにある。
この一文には、人間の成熟度を見極める本質が込められています。
たとえば、同じ出来事に対しても、人によって感じ方や反応が大きく違います。
- すぐに怒りを爆発させる人
- 一度立ち止まり、相手の背景を考えられる人
- 感情を押し殺すのではなく、穏やかに伝えられる人
この違いこそが、**感情の「精緻さ」や「成熟度」**を表しているのです。
偏屈な感情と円満な感情
露伴はさらに、感情の偏りについても言及します。
Cの感情が偏屈で、Dの感情が円満であるならば、Cの感情はDよりも低い。
つまり、視野が狭く、自分の感情に固執することは「レベルの低い感情」であり、
他者を思いやり、柔軟に受け止められる感情こそが「円満で高い感情」といえるのです。
円満な感情とは、単に「我慢すること」ではありません。
相手を理解し、状況を俯瞰し、自分の中に余白を持てる感情です。
それは知識や経験を超えた、人間としての深みをつくる要素でもあります。
感情を磨くことは「人間力」を磨くこと
現代では、知識やスキルを高めることばかりが重視されがちです。
しかし、どんなに知識が豊かでも、感情が未熟であれば人間関係はうまくいきません。
逆に、感情のレベルが高い人は、周囲との信頼を築き、穏やかな影響を与えることができます。
感情のレベルを高めるためには、次のような意識が大切です。
- 一呼吸おく習慣を持つ
→ 感情的に反応する前に、「なぜそう感じたのか」を見つめる。 - 他者の立場に立って考える
→ 感情は「相手との関係性」で成熟していく。 - 小さな違和感を大切にする
→ 感情の精緻さは、微細な心の動きを見逃さない力から生まれる。 - 経験を通して感情を鍛える
→ 喜びも怒りも悲しみも、「感じ切ること」で心の深みが増す。
まとめ:感情のレベルを意識して生きる
幸田露伴の言葉は、100年以上前に書かれたとは思えないほど現代的です。
感情を「鍛える」「磨く」という視点は、心理学やEQ(感情知性)の考え方にも通じます。
知識や技術を磨くように、感情も日々の中で磨くことができる。
それは、より豊かで温かい人間関係を築くための土台です。
私たちが目指すべきは、「知識がある人」ではなく、
**「感情のレベルが高い人」**なのかもしれません。
