セネカの悲劇『テュエステス』には、こんなやりとりがあります。
「タンタロス:最高の力が……
テュエステス:何も望まなければ、どんな力も存在しない」
ここにあるのは、欲望こそが人を支配する力を生むという洞察です。
欲望が他者に力を与える
現代の私たちは、古代の人々よりも選択の余地を持っています。
しかし依然として、欲望によって自分を縛りつけてしまうことがあるのです。
- 横柄な上司に耐える → キャリア欲がその人に力を与えている
- 本音を隠し服装を変える → 仲間に受け入れられたい欲望が自分を縛る
- 批判や無礼に我慢する → 相手に認められたい気持ちが自分を従わせる
つまり、欲望こそが他人に力を与える原因なのです。
ビル・カニンガムの自由の哲学
ファッション写真家ビル・カニンガムは、ときに雑誌社に報酬を請求しないことがありました。
その理由を尋ねられたとき、彼はこう答えています。
「いいかい、金を受け取らなければ、何も指図されずにすむんだよ」
欲望(ここでは金銭欲)を手放すことで、彼は自由を守りました。
これはセネカの教えと響き合う生き方です。
自由を守るためのストア派の視点
セネカが指摘するように、欲望を抱けば必ず「持っている者」の奴隷となります。
- 金を欲しがれば → 金を与える人の奴隷
- 名声を欲しがれば → 評価する他人の奴隷
- 愛されたいと望めば → 相手の気まぐれに翻弄される
逆に、欲望を手放せば力は消え、君は自由でいられるのです。
まとめ ― 欲望を減らせば自由が増える
欲望が君を縛り、他人に力を与える。
それを断ち切る唯一の方法は、欲望を少なくすることです。
- 欲望を手放せば、誰にも支配されない
- 必要以上の執着をなくせば、心は軽くなる
- 本当の自由は、すでに君の内側にある
セネカとカニンガムの言葉を胸に刻もう。
「欲望を持たなければ、どんな力も存在しない」。