「互助の欠如は排他につながる」——幸田露伴が見抜いた、“協力しない社会”が滅びる理由

「互助の欠如は排他につながる」とは

幸田露伴は『努力論』の中で、人間社会のあらゆる問題の根本に“精神のあり方”があることを見抜いていました。
この章「互助の欠如は排他につながる」では、露伴は**「助け合いの欠如」こそ社会や産業を衰退させる最大の原因**だと指摘しています。

「互助の精神に欠けると、農業、工業、商業のすべてにわたって著しい不利益が生じる。」

つまり、露伴が言いたいのは、
どんなに才能や努力があっても、助け合いのない社会は必ず行き詰まるということ。

これは、現代の企業経営や国際関係、そして人間関係にもそのまま当てはまります。

「互助の精神」が失われた社会の姿

露伴は、当時の日本社会をこう批判しています。

「現在の世の中を見てみると、実業家ほど互助の精神に乏しいものはない。
各自が自己の利益をはかるのは当然であり、それ自体は何ら問題ない。
しかし、もう少し互助の精神に富んでいたならば、利益はさらに大きなものになるはずだ。」

つまり、「自己利益の追求」は悪ではない。
むしろそれは自然なことです。

しかし、問題は——**「他者と協力する余裕がなくなるほど自分の利益に固執する」**こと。

露伴が生きた明治期の日本では、産業が発展する一方で、
実業家たちは「競争」を誤解し、「協力＝甘え」「共存＝弱さ」と考えていました。

その結果、露伴の言うように、

「お互いに商売敵となってつぶしあいをしている」
という状況に陥っていたのです。

「競争」と「協力」は両立する

露伴の批判は、現代の資本主義にも鋭く突き刺さります。

SNSでは「勝ち組」「個人の成功」が称賛され、
企業は「シェア奪取」「市場独占」を目標に掲げがちです。

しかし、露伴はこうした**“排他的競争”**を危険視しました。

「互助の精神が乏しいだけならまだましだが、
それが一転してもっと悪い排他の精神や行為になってしまう。」

つまり、「助け合わない」だけで済まず、
やがて「他人を蹴落とす」「同業を敵視する」方向に進むのです。

露伴の洞察は、現代のビジネスや社会問題にそのまま当てはまります。
過剰な競争が、協力を拒み、結果として全員が損をする構造を生む。
これこそが、彼の言う「排他の精神」の恐ろしさです。

「互助」が利益を大きくする

露伴は、互助の精神が「理想論」ではなく現実的な利益を生む戦略であることを強調しています。

「もう少し互助の精神に富んでいたならば、順境のときも逆境のときも、利益はさらに大きなものになるはずだ。」

この一文には、露伴の経営的洞察が凝縮されています。

協力し合うことで、

• 知恵や資源を共有できる
• 市場を拡大できる
• 危機を共に乗り越えられる
  という“共存の利益”が生まれるのです。

現代で言えば、アライアンス・オープンイノベーション・共同体経営などがその実例。
露伴が説いた「互助の経営」は、100年後の社会でようやく再評価されているとも言えるでしょう。

「排他の精神」はなぜ生まれるのか

露伴の時代も現代も、人が排他に走る原因は共通しています。

1. 恐れ——他人に奪われる不安
2. 慢心——自分だけで成功できるという錯覚
3. 無関心——他者の存在を考えない心の鈍化

露伴は、このような心の偏りを「精神の貧困」と見抜きました。
排他の精神とは、協力を恐れる弱さの裏返しなのです。

互助の精神を取り戻すために

露伴の思想を現代社会で生かすなら、
「互助」を取り戻すために次の3つの行動が鍵になります。

① 成功を“共有”する

個人や企業が得た利益を、社会や仲間に還元する。
利益の再分配は、共存のための知恵です。

② 同業を“敵”ではなく“仲間”として見る

同じ業界で働く人々は、競争相手でありながら、社会全体を支えるパートナーでもある。
互助の視点を持つことで、業界全体が成長します。

③ 他人の成功を祝福できる心を持つ

嫉妬や排他の感情は、自分の成長を止める毒。
他人の成功を「自分の可能性の証」として見れば、互助の精神が自然に芽生えます。

まとめ：協力しない社会は、自らを滅ぼす

幸田露伴の「互助の欠如は排他につながる」という言葉は、
現代社会への痛烈なメッセージです。

• 互助がなければ、社会も経済も成長しない
• 互助の欠如は、やがて排他と分断を生む
• 排他の精神は、最終的に自分の首を絞める

露伴が伝えたかったのは、
**「協力こそが最大の競争力になる」**という真理です。

助け合うことは、弱さではなく強さの証。
他人の成功を支えることが、結局は自分の成功を育てることにつながるのです。

互助を欠いた社会は崩れます。
互助を育む社会は、永遠に発展します。

幸田露伴のこの言葉は、今こそ私たちが取り戻すべき“協力の哲学”なのです。

TAKA

理学療法士/ビール

YouTubeContact

理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。