リハビリ関連

筋攣縮を考える:短縮との違いと末梢神経アプローチの臨床的意義

「筋が硬い」を2つに分けて考える

臨床でよく耳にする「筋が硬い」という表現。これには大きく2つの病態が含まれています。

  1. 筋短縮:筋が物理的に短くなり、縮こまった状態
  2. 筋攣縮:筋の過緊張が持続している状態

この2つを区別することで、治療戦略が大きく変わります。


筋短縮の特徴

  • 筋の圧痛は乏しい
  • ストレッチにより改善が見込める
  • サルコメアの数が減少しているため、改善には時間がかかる

筋短縮は「構造的な変化」が強いため、即時的な変化は得にくく、長期的な介入が必要です。


筋攣縮の特徴

  • 筋に圧痛がある
  • リラクセーションが有効
  • 自分の意志で収縮や弛緩のコントロールがしにくい

さらに重要なのは、末梢神経障害の関与が報告されている 点です。
つまり、筋攣縮は神経由来の問題が背景にあることが多く、適切な神経アプローチを行うと短時間で改善するケースが少なくありません。


筋攣縮と末梢神経アプローチ

臨床では、筋攣縮の支配神経(末梢神経)に介入することで、筋がその場で緩むことがあります。

代表的な例が ハイドロリリース です。
支配神経に対して生理食塩水を注入することで、

  • 神経の滑走性が改善
  • 筋攣縮が解消
  • 直後に筋出力も回復

といった変化が見られることが報告されています。


筋攣縮改善後の重要なステップ

筋が柔らかくなり、筋出力が上がるのは 攣縮が解消された結果 と考えられます。
しかし、そこで終わってしまっては不十分です。

改善後に必要なプロセス

  1. 収縮練習
    → 筋を実際に収縮させ、正しい収縮感覚を再獲得させる。
  2. 徒手療法・運動療法による滑走性の維持
    → 得られた滑走性を保持し、さらに向上させる。
  3. 全身機能の改善
    → 神経や筋に過剰な負担がかからない動作やアライメントを整える。

これにより、一時的な改善に留まらず、持続的な治療効果と再発予防につながります。


筋攣縮を「末梢神経軸」で考えるメリット

筋攣縮を従来の「筋そのものの問題」として捉えるのではなく、末梢神経を軸に理解する ことで以下の利点があります。

  • なぜ筋が硬くなるのかを明確に説明できる
  • 改善のスピードや持続性の違いを整理できる
  • ハイドロリリース、徒手療法、運動療法を結びつけて理解できる

これまで臨床で「説明が難しい」と感じていた現象も、神経の滑走性や末梢神経の障害という観点を加えることで、言語化しやすくなります。


まとめ

  • 筋が硬い状態には 短縮攣縮 がある
  • 筋短縮は構造的変化が主体で改善に時間を要する
  • 筋攣縮は末梢神経障害が関与し、適切な介入で短時間に改善することが多い
  • 改善後は収縮練習や徒手療法で滑走性を維持・強化することが大切
  • 末梢神経を軸に考えることで、臨床現象の理解と説明がしやすくなる
ABOUT ME
taka
理学療法士TAKAが自分の臨床成果を少しでも高めるために、リハビリ・運動学・生理学・物理療法について学んだ内容を発信。合わせて趣味の読書や自己啓発等の内容の学びも自己満で発信するためのブログです。