「自分を忘れて人に尽くす」──奉仕の中にこそ、人生の本当の喜びがある
私たちは日々、「どうすれば幸せになれるか」を考えながら生きています。
より良い仕事を得たい、もっと収入を上げたい、人から認められたい──。
それ自体は悪いことではありませんが、自分のことばかり考えてしまうと、かえって心が疲れてしまうことがあります。
ケンブリッジ大学の古典学者、アルフレッド・ハウスマン教授は、この点について明快に語っています。
■ 「自分のことばかり考える人は、みじめになる」
ハウスマン教授はこう述べました。
「自分のことばかり考えている人は、人生で多くのものを得ず、みじめな人生を送ることになる。
一方、人々に奉仕するために自分のことを忘れる人は、人生の喜びを見つけることができる。」
この言葉は、現代の私たちにこそ響くメッセージです。
SNSや情報過多の時代に生きる私たちは、どうしても「自分をどう見せるか」「自分が得をするか」に意識が向きがちです。
しかし、その思考に囚われるほど、心は閉じていき、孤独を感じるようになります。
一方で、「人のために何かをしたい」と思って行動する人は、自然と心が開き、温かさに満たされます。
それは、人間が本来“他者とつながる存在”だからです。
■ 「自分を忘れる」とは、無理に犠牲になることではない
「自分を忘れて人に尽くす」という言葉を聞くと、
「自分を犠牲にしろ」という意味だと誤解されがちです。
しかし、ハウスマン教授が伝えたかったのは、**“自分のエネルギーを他者の幸せに向けること”**の尊さです。
たとえば──
- 職場で困っている同僚を助ける
- 家族や友人の話を丁寧に聞く
- 誰かの夢を応援する
そんな小さな行動の積み重ねこそが「奉仕」です。
そして不思議なことに、そうした行動をとるほど、自分自身の心が満たされていくのです。
■ 奉仕の中にある「幸福ホルモン」
心理学の研究によると、人に親切にする行為は脳内でオキシトシンやセロトニンといった“幸福ホルモン”を分泌させることが分かっています。
つまり、人を助けたり、誰かの役に立ったりすることは、科学的にも幸福につながる行為なのです。
「ありがとう」と言われたときの嬉しさ。
誰かが笑顔になるのを見たときの温かい気持ち。
それは、どんな物質的な報酬よりも深い満足感をもたらします。
だからこそ、奉仕は“見返りを求めない行為”でありながら、結果的に“最大の報酬”をもたらすのです。
■ 自分中心の思考から抜け出すシンプルな方法
もし今、「自分のことで頭がいっぱいだ」と感じているなら、
次のような小さなことから始めてみてください。
- 誰かのために5分使う
メールで励ましの言葉を送る、ちょっとした手助けをする──それだけでいいのです。 - 「ありがとう」を増やす
感謝を伝える行為は、相手だけでなく自分の心を豊かにします。 - “誰かのために”を目的にしてみる
たとえば「自分が頑張ることで家族が安心する」と考えると、努力の意味が変わります。
他人を思いやる習慣は、心の焦点を「自分」から「外」に移し、結果として精神的な安定をもたらします。
■ 奉仕の精神が、人生を明るく照らす
ハウスマン教授の言葉にある「奉仕」は、宗教的な徳目ではなく、
人間として自然に生きるための知恵です。
自分のことばかり考える人生は、視野が狭くなり、
やがて満足のいかない日々が続きます。
しかし、人の役に立つことを日々の目的にすれば、
どんな小さな行動にも意味が生まれ、人生が豊かに感じられます。
デール・カーネギーが『道は開ける』でこの話を紹介したのも、
「他者への奉仕こそが、心配や不安を癒やす最良の薬」だからです。
■ まとめ:幸せになりたいなら、誰かを幸せにしよう
アルフレッド・ハウスマン教授の言葉を、改めて胸に刻みましょう。
「自分のことばかり考えている人は、みじめな人生を送る。
人々に奉仕するために自分のことを忘れる人は、人生の喜びを見つけることができる。」
幸せとは、手に入れるものではなく、分かち合うもの。
人に尽くすことは、他人のためであると同時に、
最も深い意味で「自分のため」でもあるのです。
