「感謝の心は、自然には育たない」──子供を恩知らずにしないための親の役割
子供が成長するにつれて、親は何度もこう思うことがあります。
「どうして感謝の気持ちがないのだろう?」
「もっと“ありがとう”が言える子になってほしいのに…」
しかし、感謝の心は自然には育たない──
それが、デール・カーネギー『道は開ける』が伝えている厳しくも真実な教えです。
■ 古くから「恩知らずな子供」に親は悩んできた
「恩知らずな子供ほど親を悲しませる存在はいない」。
それは今に始まったことではありません。
シェイクスピアの戯曲『リア王』には、こんな有名な台詞があります。
「恩知らずな子供を持つことは、毒蛇に嚙まれるよりも辛い。」
リア王は、娘たちの裏切りに絶望し、父として深い悲しみを味わいました。
この物語は、400年以上前に書かれたにもかかわらず、今も多くの親が抱える現実を映しています。
つまり──恩知らずな子供に悩むのは、時代を超えた人間の共通の苦悩なのです。
■ 感謝の心は「教えなければ育たない」
カーネギーはこう警鐘を鳴らしています。
「親が子供に感謝の気持ちの大切さを教え込まなければ、恩知らずな子供に育ってしまうだろう。」
感謝の心は、生まれつき備わっているものではありません。
それは、家庭という土壌の中で“育てる”ものです。
カーネギーはその過程を、庭にたとえました。
「子供が恩知らずになるのは、ほったらかしにしておいた庭に雑草が生い茂るようなもの。
感謝の気持ちはバラのようなもので、水と肥料と愛情を与えて育てなければならない。」
まさにその通りです。
「言わなくても分かるだろう」という親の思い込みこそ、
子供の感謝の心を枯らしてしまう原因かもしれません。
■ 「感謝」を学ぶのは“経験”と“姿勢”から
では、どうすれば感謝できる子供に育つのでしょうか?
それは、感謝を「言葉」で教える」だけでなく、「姿勢」で見せる」ことにあります。
- 親自身が「ありがとう」を口にする
- 誰かに助けてもらったときに感謝の気持ちを表す
- 子供がしてくれたことに「うれしい」と伝える
子供は親の言葉よりも、親の態度を見ています。
親が感謝を実践していれば、自然と「感謝することは素敵なことだ」と学んでいくのです。
また、子供に「ありがとう」を言わせることより、
「感謝したい気持ちが湧く経験」を与えることも大切です。
たとえば、
- 誰かに手伝ってもらう
- 人の優しさに触れる
- 動物や自然をお世話する
そうした体験が、“恩を受けた”という感情の芽を育ててくれます。
■ 恩知らずな子供が育つとき、親の姿勢が問われる
カーネギーは厳しく言います。
「もし我が子が恩知らずな人間に育ったなら、それはいったい誰の責任なのか?
たぶん親である。親がしっかりとしつけなかったから、そうなってしまうのだ。」
耳が痛い言葉ですが、そこには真実があります。
“しつけ”とは、「ありがとうを言わせる」ことではなく、
「感謝の価値を理解させる」ことです。
親が「人に感謝できることがどれほど尊いか」を心から感じていれば、
その思いは子供に伝わります。
■ 感謝の心は、幸せの根っこ
感謝を持てる子は、他人との関係を大切にできます。
他人の優しさに気づき、自分も優しくなれる。
それが、社会で生きるうえでの最大の強みになります。
逆に、感謝を知らない子供は、どれだけ頭が良くても、心が貧しくなってしまう。
だからこそ、親が「ありがとう」を教えることは、
一生を支える人格の土台を育てる行為なのです。
■ まとめ:感謝の教育は、最高の愛情表現
- 感謝の心は自然には育たない
- 親の言葉と姿勢で「ありがとう」を教える
- 感謝を学ぶ経験を通して、人を思いやる心が育つ
シェイクスピアの言葉にもあるように、恩知らずな子供を育てることほど親を傷つけることはありません。
けれども、カーネギーが伝えるように、感謝は育てることができます。
「ありがとう」を教えることは、子供に幸せの種を渡すこと。
その種がやがて人生という庭で、美しい花を咲かせるのです。
