「非難より理解を」──リンカーンが教える、人を責めずに思いやる力

私たちは日々、さまざまな人と関わりながら生きています。
仕事でも家庭でも、意見の食い違いや誤解は避けられません。

そんなとき、多くの人は「なぜあの人はそんなことをするのか」と相手を責めてしまいます。
しかし、アメリカの歴史に名を刻む大統領エイブラハム・リンカーンは、まったく違う生き方を貫きました。

■ 非難され、裏切られても「人を責めなかった男」

デール・カーネギーは『道は開ける』の中で、こう書いています。

「アメリカ史上、リンカーンほど非難され、憎まれ、裏切られた人物はいるまい。」

それでもリンカーンは、相手の好き嫌いで人を判断しなかったと伝記に記されています。

彼は大統領として重要な任務を遂行する際、
「政敵だから」「嫌いだから」という理由で人を遠ざけるようなことは決してしませんでした。

むしろ、敵であっても能力がある人間なら抜擢する。
その公平な姿勢こそが、彼を“国を一つにした指導者”へと導いたのです。

■ 「その人の行動には、その人なりの理由がある」

リンカーンが驚くほど寛容だったのは、彼が人間を深く理解していたからです。

「その人の言動は、その人の境遇や状況、教育、習慣、遺伝などが複雑に絡み合っている。」

つまり、私たちが他人の言動を完全に理解できないのは当然なのです。
人の性格や判断、行動は、その人が歩んできた無数の経験の結果だからです。

リンカーンはこう考えました。

「もし自分が相手と同じ体を持ち、同じ感情や教育を受け、
同じ人生を歩んできたなら、私は彼と同じ行動をとっただろう。」

この考え方は、まさに思いやりの本質を突いています。

■ 人を理解しようとするだけで、怒りは静まる

私たちは他人に怒りを感じたとき、その人の行動だけを見ています。
しかし、その裏にある「背景」や「事情」に目を向けると、
不思議と怒りは少しずつ静まっていくのです。

たとえば──

• 理不尽なことを言う上司は、実は家庭で問題を抱えているかもしれない
• ぶっきらぼうな同僚は、過去に裏切られた経験を持っているかもしれない
• ミスを繰り返す部下は、ただ自信を失っているだけかもしれない

人を理解しようとする瞬間、
「責める心」から「支える心」へと意識が変わります。

■ 非難ではなく、理解で人は動く

デール・カーネギーの名著『人を動かす』にもあるように、
「批判は相手を変えない」。

むしろ、批判は人を守りに入り、心を閉ざさせてしまいます。

一方、理解と共感は人を動かす力を持っています。
「あなたの気持ち、少しわかります」と言われた瞬間、
人は心を開き、行動を変えようとします。

リンカーンが多くの部下や国民に慕われたのは、
彼が誰に対しても理解と尊重の姿勢を持っていたからなのです。

■ 思いやりのある人が手にする「心の平和」

他人を非難することは一時的な快感をもたらします。
しかし、そのあとに残るのは罪悪感や後味の悪さ。

反対に、理解と寛容を選ぶ人は、心に静かな安らぎを得ます。

「相手を責めず、理解して思いやりを持つ。
そして、そんな人間にならなかったことを神に感謝する。」

カーネギーはこう締めくくっています。

私たちが誰かに怒りを覚えたとき、
「自分はまだ、その状況を冷静に見られる側でよかった」と感謝できれば、
心の余裕を取り戻すことができます。

■ 今日からできる「思いやりの実践法」

1. 相手を“ラベル”で判断しない
   　「嫌な人」「苦手な人」と決めつける前に、
   　「この人にはどんな背景があるのだろう？」と考える。
2. 批判の前に“理解の質問”をする
   　「どうしてそう思うの？」と穏やかに尋ねることで、対話が生まれます。
3. 怒りを感じたら、“感謝”に意識を戻す
   　「自分はこの怒りを客観的に見られるだけの余裕がある」──
   　そう思うだけで、心のバランスが戻ります。

■ まとめ：理解することが、最大の思いやり

• 人を責めるより、理解しようとする姿勢を持つ
• 怒りの裏には、相手の事情や傷がある
• 寛容さは他人だけでなく、自分の心も救う

デール・カーネギーがリンカーンの生き方を紹介したのは、
**「人間を変えるのは批判ではなく、理解と愛」**だと伝えるためです。

人を非難する代わりに、理解しようとする心を育てましょう。
その瞬間から、あなたの人間関係は驚くほど穏やかに、豊かに変わっていくはずです。

TAKA

理学療法士/ビール

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理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。