物理療法

低出力レーザー療法(LLLT)のメカニズムと臨床応用:疼痛・炎症軽減への可能性

はじめに

リハビリや理学療法の臨床現場において、**低出力レーザー療法(Low Level Laser Therapy: LLLT)**は疼痛管理や炎症抑制の補助的アプローチとして注目されています。
薬物療法に比べて副作用が少なく、非侵襲的に施行できる点から関節炎や顎関節症などに応用されることが増えています。

本記事では、LLLTの作用メカニズム・臨床効果・禁忌事項を整理し、臨床応用のポイントを考えていきます。


LLLTの作用メカニズム

レーザー光は波長によって組織への深達度が異なります。

  • 遠赤外線領域:皮膚表層まで
  • 近赤外線領域:真皮・皮下組織にまで到達

これにより、目的組織に応じて適切な波長を選択する必要があります。

抗炎症作用

動物実験(in vivo)では、低出力レーザー照射により炎症性サイトカインの産生が減少することが報告されています。これにより、関節炎モデルで炎症反応を抑制する効果が期待されています。

疼痛軽減作用

臨床報告では、顎関節症患者における疼痛軽減が示されています。ただし、プラセボ効果を完全に否定できない試験デザインも多く、作用メカニズムには依然として議論の余地があります。


臨床応用の可能性

低出力レーザー療法は以下のような対象に応用されています。

  • 変形性関節症や関節炎:炎症反応の軽減、疼痛緩和
  • 顎関節症:筋・関節部位への照射による疼痛抑制
  • 筋骨格系疼痛:筋緊張緩和、循環改善効果の補助

特に、疼痛コントロールが難しい慢性関節疾患患者にとって、薬物療法や徒手療法と併用できる点は大きな利点です。


禁忌と注意点

LLLTは比較的安全とされていますが、照射禁忌部位には注意が必要です。

  • 悪性腫瘍部位:腫瘍細胞増殖を助長する可能性がある
  • 出血部位:血腫拡大のリスクがある

実際に、頭頸部癌細胞や血腫に対してレーザーが増大効果を及ぼしたとの報告もあります。
そのため、悪性腫瘍が疑われる部位や出血を伴う炎症部位への照射は厳禁とされています。


エビデンスと課題

現状の研究エビデンスは、動物実験や小規模臨床試験が中心であり、まだ一定のコンセンサスが得られているわけではありません。

  • エビデンスあり:炎症性サイトカイン抑制(基礎研究)、関節炎・顎関節症での疼痛軽減(臨床報告)
  • 課題:プラセボ効果の影響、研究デザインの限界、波長や出力の最適パラメータの不一致

そのため、臨床応用する際には「補助的治療」という位置づけで、エビデンスに基づいた慎重な活用が求められます。


まとめ

低出力レーザー療法(LLLT)は、非侵襲的に炎症抑制や疼痛軽減を狙える治療法であり、特に関節炎や顎関節症などでの応用が報告されています。

  • 波長により深達度が異なるため、治療目的に応じた設定が必要。
  • 抗炎症・鎮痛効果が期待されるが、プラセボ効果を否定できない報告もあり議論の余地あり。
  • 悪性腫瘍や出血部位は絶対禁忌であり、適応判断には注意が必要。

今後の大規模ランダム化比較試験によって、より明確なエビデンスが確立されることが期待されます。

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taka
理学療法士TAKAが自分の臨床成果を少しでも高めるために、リハビリ・運動学・生理学・物理療法について学んだ内容を発信。合わせて趣味の読書や自己啓発等の内容の学びも自己満で発信するためのブログです。