外国人株主の増加で進む「利益中心の経営」――企業と政治が国民を置き去りにする構造とは?
多くの人が悩んでいるので今回はその解決策を探るべく、日本企業の経営方針が「利益中心主義」に転換していった背景と、それに政治がどう関与しているのかを解説します。
1990年当時、日本の株式市場における外国人投資家の保有比率は5%未満でした。しかし、2020年以降は30%を超え、今や外国人株主の存在感は無視できないものとなっています。外国人株主の要望はシンプルです――「利益の最大化」。この要求に応えるため、日本の上場企業は配当金や自社株買いを重視する経営方針へと大きく舵を切りました。
利益を最大化するには、企業はコストを削減しなければなりません。そのため、下請け企業に対する厳しいコスト削減要求(売上原価の圧縮)や、正規雇用から非正規雇用への切り替え(人件費の削減)、技術開発や設備投資の抑制(減価償却費の削減)といった手法が多用されてきました。
さらに企業は、法人税率の引き下げや消費税の増税といった「利益に直結する政策」を実現するため、自民党政権へのロビー活動を強化します。その背景には、企業から自民党への多額の政治献金が存在します。
例えば、2021年から2023年の間に自民党へ最も多くの献金を行ったのは、住友化学の1億5000万円。次いでトヨタ自動車も同額を献金し、キヤノン(1億2000万円)、日立製作所(1億1000万円)、日産自動車(1億800万円)が続いています。
注目すべきは、これらの企業の多くが外国人株主の影響下にあることです。たとえば、中外製薬は2023年11月時点で外国法人による持株比率が約75%、ソニーは約58%、HOYAやオリンパス、SMCも50%を超えています。つまり、すでにこれらの企業は“外資系企業”と見なしても過言ではありません。
このような状況下で、企業の経営者は利益最大化に突き進み、自民党に献金を通じて政策の方向性に影響を及ぼします。そして、自民党も企業献金を失いたくないため、経団連の要望を優先するという「癒着の構造」が出来上がっているのです。
実際、住友化学の前会長である十倉雅和氏は、2021年から2025年まで経団連会長を務めており、政治と経済の結びつきが強まっていることは明白です。
このような企業と政治の密接な関係性の中で、置き去りにされているのが「日本の一般国民」です。雇用の質が下がり、将来のための投資も削減され、国民生活が豊かにならない一方で、株主や企業上層部だけが利益を享受する構造が、ますます固定化されつつあります。
今、私たちに求められているのは、このような仕組みに気づき、声を上げていくことではないでしょうか。
この情報が皆さんのお役に立てば幸いです。
