「正」を失うな──幸田露伴『努力論』に学ぶ、奇説や流行に惑わされない生き方
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第27回参議院選挙では、投票率が58・5%に達し、前回の48・8%から約10ポイント上昇した。東京選挙区では61・5%と、全国3位の高さを記録した。
自民党が投票率の低下を狙い、3連休の中日に投開票日を設定したにもかかわらず、この結果である。かつてない変化が起きていた。
毎日新聞の調査によれば、「前回は行かなかったが今回は投票した」と答えた人が8%。その中で18〜29歳が最も多く、約3割を占めた。
これまで選挙に無関心だった若者が、なぜ今回に限って投票に向かったのか。その背景には、経済環境の変化がある。
1990年代以降、日本は長いデフレ期にあった。物価が下がり続ける中、賃金が増えなくても生活は成り立つように見えた。
この「なんとなく生きていける」感覚が、政治への関心を奪っていった。デフレとは、静かに社会を衰退させる「死に向かう病」であるにもかかわらず、その危険に多くの人が気づけなかったのである。
コロナ禍、ウクライナ戦争、そして日本の供給力の低下。これらが重なり、物価は急上昇した。
だが、賃金は追いつかず、実質所得は減少を続けた。生活の苦しさが、これまで無関心だった若者たちに「このままでは生きられない」という危機感をもたらした。
物価上昇は、デフレ期には感じられなかった「生の実感」を突きつけ、人々を行動へと駆り立てたのである。
今回の選挙で明らかになったのは、政治的無関心ではなく「生存意識」が人を動かすという現実だ。
インフレという現象が、若者の意識を変え、投票行動を促した。日本はすでに「サプライロス型インフレ」という新しい局面にある。
どれほど政権が投票率を抑えようとしても、生活への危機感が高まる限り、人々は再び動き出す。
若者が政治を変える時代が、ついに始まったといえるだろう。