『3つの恒久減税が実質賃金を押し上げる理由』
サプライロス型インフレという異常事態
2023年以降、日本経済は静かに転換点を迎えた。
政府のデフレ放置と供給力を削ぐ政策により、需要ではなく供給不足が原因の「サプライロス型インフレ」が進行したのである。物の値段が上がっても、それは需要の拡大ではなく、生産能力の縮小によるものだった。
こうした事例は歴史上にもある。戦争や内乱によって供給網が破壊され、インフレに陥った国々だ。日本自身も、敗戦直後に同様の事態を経験している。1946年、インフレ率は500%。それでも、その後の日本は「高度経済成長」へと転じた。
つまり、供給力が損なわれても、適切な需要拡大策があれば、経済は再び成長できるのだ。
減税こそが再成長の起点
では、現代の日本が再び成長するには、何が必要か。
答えは「恒久的な減税」である。
まず、消費税の引き下げだ。2025年度の税収は約25兆円だが、輸出戻し税分を含めれば実質35兆円にのぼる。これを5%に引き下げれば、17兆円規模の減税となる。
さらに、所得税の基礎控除を178万円へ引き上げれば約7兆円、ガソリン税の暫定税率廃止で1.5兆円。合計で25兆円を超える「恒久減税」が実現する。
25兆円とは、日本の名目GDPの約4%。この分の所得が国民の手元に残ることになる。乗数効果を考えれば、実質経済成長率は6%を超える可能性がある。これは高度成長期に近い水準だ。
減税がもたらす好循環
重要なのは、これらが一時的な景気刺激策ではなく、恒久的な措置であることだ。
減税によって増えた可処分所得は、翌年以降も継続して消費と投資を押し上げる。消費が増えれば企業の売上が伸び、生産投資が増加する。投資が増えれば雇用と所得が拡大し、再び消費が増える。
この循環が経済全体を押し上げ、実質賃金を長期的に引き上げていく。
経済成長とは「お金が使われること」であり、消費も投資もすべて需要そのものだ。減税は、その需要を直接的に押し上げる最も確実な手段といえる。
消費税減税と「誤った公平論」
一方で、「高所得者の負担も軽くなる」として減税に反対する声もある。だが、この議論は本質を見誤っている。
たとえば、消費税が廃止され、高額商品が値下がりすれば、これまで購買を控えていた高所得層が動く。その支出は、自動車メーカーや販売業者、下請け工場など、多くの労働者の所得へと変わる。お金は消えるのではなく、循環して新たな所得を生むのだ。
「高所得者が得をする」というのは錯覚であり、実際には、より多くの人々に所得が行き渡る構造が生まれる。減税による需要拡大は、社会全体を豊かにする経済の基本原理にほかならない。
経済再生の鍵は「税を減らす勇気」
日本は今、戦後以来の供給制約の中にある。だが、過去の歴史が示すように、供給能力が損なわれた時こそ、需要を支える政策が必要だ。
3つの恒久減税――消費税、所得税、ガソリン税――こそが、実質賃金を押し上げ、停滞した日本を再び成長の軌道へ導く処方箋である。
