『ガソリン暫定税率廃止と財源論の本質』
暫定税率、ついに廃止へ
長年議論されてきた「ガソリンの暫定税率」。その廃止が、ついに今年12月31日に決定した。経由(軽油)も同時に廃止される見通しで、半世紀に及んだ“しばらくの間”の課税に終止符が打たれる。これは、国民にとって大きな朗報といえる。
本来2年間の時限措置として始まった暫定税率が、約50年も継続された。この事実だけでも、税制の歪みと政治の惰性が浮き彫りになる。ようやく本来あるべき姿に戻ったと言えるだろう。
なぜ「代替財源」が必要なのか
しかし、この発表と同時に「ガソリン減税分の穴埋めをどうするのか」という議論が再燃した。政府は今年度内は税収の上振れで補うとしつつ、来年末までに新たな“財源”を検討するとしている。だが、ここに大きな矛盾がある。
暫定税率とは“しばらくの間”上乗せするための特例税だった。それを元に戻しただけなのに、なぜ「別の財源」が必要になるのか。本来、存在するはずのない税をやめるだけであり、新たな負担を生む理由はどこにもない。
老朽化する道路のため?
「老朽化した道路の維持管理費を確保するため」という政府の説明も、論理としては成り立たない。道路の維持にはすでに重量税が存在しており、重い車ほど多く税を支払っている。それに加え、ガソリン税も一般財源化され、もはや道路整備に限定されていない。
本来の目的を失った税金を長年徴収し続けたうえで、「道路整備に使う」と再び言い出すのは、国民への説明として破綻している。
財源論が招く停滞
財源論に囚われ続けることこそ、日本経済停滞の根本原因である。減税をするなら必ず増税で補う──そんな“行ってこい”の関係が繰り返される限り、経済は循環せず、成長の芽は育たない。
今回検討されている法人税優遇の見直しや金融所得課税の強化も、その場しのぎの穴埋め策に過ぎない。暫定税率の廃止は、減税ではなく「正常化」である。新しい財源を作る発想そのものが、本来の目的を見失わせる。
本来の姿に戻すという決断
ガソリンの暫定税率廃止は、ようやく一歩前進した政策といえる。しかし、その後に「新たな税を」と言い出すなら、意味は薄れる。
必要なのは“財源探し”ではなく、“支出の見直し”である。政治が本気で国民生活を守るなら、まずは不要な課税をやめ、国家財政を透明にすること。今回の決定が、その第一歩となるかどうかが問われている。
