『移民がいなくても経済は成長できるという事実』
移民が経済成長を支える、という幻想
「移民を受け入れたおかげで高度経済成長した国」――そんな国を、歴史の中から一つも挙げることはできない。
中国の移民比率はわずか0.1%。それにもかかわらず、21世紀に入って以降、驚異的な成長を続けてきた。
かつての日本も同じである。戦後の高度経済成長期、日本は移民をほとんど受け入れなかった。それでも年10%前後という驚異的な成長を実現した。
一方で、移民を受け入れたOECD諸国の成長率はおおむね4%にとどまっている。つまり、「移民=成長」という単純な図式は、データの上でも成立していない。
経済成長の原動力はどこにあるのか
そもそも、高度成長の象徴とされるイギリスの産業革命も、移民によって起きたものではない。
むしろ、ペストによる人口減少と人件費の上昇が、技術革新を促した。
人手が足りないからこそ、生産性を高めるための発明が生まれた。これが経済発展の本質である。
移民によって人手不足を「補う」ことは、一見合理的に見えても、実際には生産性向上への投資を妨げる。長期的には経済成長を鈍化させる要因になるのだ。
日本の成長を支えた三つの力
内閣府が発表する潜在GDPの構成を見ると、日本経済の成長を支えた要素が明確になる。
それは「労働投入」「資本投入」「全要素生産性」という三つ。
バブル崩壊まではこの三つがバランスよく増加し、安定した成長を続けた。
バブル崩壊以降、労働投入は減少したが、資本投資と生産性向上が成長を支え続けた。
つまり、労働力が減っても、技術と設備投資で経済は拡大できるということだ。
「人手不足=移民拡大」という思考停止
今後、日本で外国人労働者の議論が進むたびに、必ずこうした声が上がる。
「移民を入れないと人手不足が解消できない」と。
だが、それは根本的な誤解である。人手不足は、労働生産性の向上によってこそ克服できる。
人を増やすのではなく、一人当たりの付加価値を高めることが、本来の経済成長の道だ。
成長の鍵は「人を増やすこと」ではない
日本経済を再び成長軌道に乗せるには、移民に頼るのではなく、技術投資・教育・設備更新によって生産性を高めるしかない。
移民受け入れは短期的な緩和策にすぎず、長期的には成長を鈍化させる“麻酔”のようなものだ。
人口減少を悲観するのではなく、生産性を伸ばすことで「質」で勝負する時代へ。
高度経済成長の歴史が示すのは、「移民がいなくても、成長は可能である」という揺るぎない事実である。
