『ガソリン税の暫定税率廃止が示す“財源論”の限界』
半世紀続いた「暫定」の終わり
ついに、ガソリン税の暫定税率が廃止される。
廃止日は12月31日。これにより、ガソリン価格は1リットルあたり約25円安くなる見通しだ。
さらに、軽油引取税の暫定税率(17.1円)も来年4月1日に廃止される。こちらは地方税であるため、地方交付税交付金の増額で補う方針となっている。
いずれも、補助金を段階的に増やして価格を調整しつつ、税廃止と同時に補助金も終了する仕組みだ。
国民すべてに恩恵がある
ガソリンを使うドライバーだけでなく、運送業など燃料コストに依存する産業も恩恵を受ける。
物流コストが下がれば、商品価格の上昇も抑えられる。
つまり、車を持たない人にも、生活全体の物価安定という形でメリットがある。
今回の減税は、単なる「ドライバー向け優遇策」ではなく、国民生活全体に波及する政策といえる。
「ザイゲンガー」の幻想
減税が決まると、必ず聞こえてくるのが「財源はどうするのか」という声だ。
だが、1.5兆円規模の減税で「ザイゲンガー」と騒ぐのは、政治的な思考停止に近い。
なぜなら、減税は「支出」ではないからだ。
財源とは“政府支出の源”を指す言葉であり、「国民の負担を減らす」行為に財源は不要である。
政府が支出を行うときは、国債を発行して貨幣を供給する。その結果、民間の預金残高、すなわち国民の黒字が増える。
その後、税金で一部を回収しているにすぎない。
したがって、「取らない」という選択に、そもそも財源論を持ち込むこと自体が間違いなのだ。
地方税収の調整も可能
軽油引取税は地方税であり、確かに地方財源を減らすことになる。
だが、それも国債を発行して地方交付税を増やせば済む話である。
国全体のマクロ経済を見れば、これも「財政中立」に近い処理に過ぎない。
問題なのは、減税そのものではなく、いつまでも財源論に縛られて政策判断を遅らせる政治の姿勢だ。
真の転換点となるか
今回の暫定税率廃止は、法人税を除けば21世紀初の“恒久減税”となる。
額は1.5兆円と小さいが、象徴的な意味は大きい。
財源論を先送りにしつつも、減税という結果を実現できたこと。それこそが政治の転換点といえる。
次に目指すべきは、基礎控除の引き上げなど、国民生活を直接支える減税である。
「財源がないから何もできない」という思考から、ようやく一歩抜け出した今、政治が試されている。
