政治・経済

『ガソリン暫定税率廃止と政治家の論点ずらし』

taka

暫定税率廃止という歴史的転換

11月4日、臨時国会が開幕する。
その直前、政府は12月31日をもって「ガソリン・軽油の暫定税率を廃止する」方針を正式に決定した。
この決定は、半世紀続いた“暫定”という名の重税にようやく終止符が打たれるという、極めて大きな一歩である。

増税は容易に決まるが、減税はいつも抵抗を受けてきた。
財務省も自民党も、税収減を何より嫌う。
それでも今回、ついに「減税」という選択がなされたのは、国民生活の逼迫を無視できなくなった証といえるだろう。


河野太郎氏の“反対論”とその矛盾

そんな中で波紋を呼んでいるのが、河野太郎氏の発言である。
彼はテレビ番組で「フェラーリやポルシェに入れるガソリンを下げる必要はない」と述べ、暫定税率廃止に反対する姿勢を明確にした。

理由は、「温暖化が進む中で化石燃料を安くするのは悪いメッセージになる」からだという。
だが、暫定税率の廃止は環境政策の話ではない。
燃料高による生活コストの上昇をどう緩和するかという経済政策の問題である。

環境問題と生活支援を同列に語ることは、論点のすり替えでしかない。
しかも「不裕層に減税する必要はない」という主張も、現実と乖離している。
高級車のオーナーだけを対象に税制を設けることは不可能であり、結果的に負担を強いられるのは中小事業者や運送業界だ。


「本当に困っている人」とは誰か

河野氏は「本当に困っている人に支援を」と繰り返す。
だが、その“本当に困っている人”の基準が極端に狭い。
燃料高に苦しむトラックドライバーや一般家庭は、すでに生活防衛の限界に達している。
それでも政府は“ピンポイント支援”という名目で、支援を先延ばしにしてきた。

30年にわたる経済停滞の中で、そうした対応が繰り返された結果が今の日本の現状である。
政治家たちは「財政健全化」を掲げ、国民負担を減らさないことを当然視してきた。
その発想のままでは、経済の再生など到底望めない。


財政論と政策の“コスパ”

さらに河野氏は、「円安対策には日銀の金利引き上げと財政再建が必要」と主張した。
だが、今回のテーマは暫定税率の廃止――本来の姿に戻すだけの話である。
1リットル25円の上乗せをやめることが、どうして財政再建と結びつくのか。

政府はこれまで、ガソリン価格を抑えるために補助金を7兆円以上も投入してきた。
一方、暫定税率廃止で失われる税収は1兆5000億円程度。
どちらが財政的に効率的かは明らかだ。
それでも「補助金」という形を選び続けるのは、財源を操作しやすいからである。


論点の本質を見失わないために

フェラーリを例に出して庶民の減税を否定する発言。
環境問題を盾にして、生活支援を後回しにする政治。
これこそが、長年日本を縛ってきた“財政第一主義”の象徴といえる。

本来問われるべきは、「誰のための政治なのか」という一点である。
暫定税率廃止は、ようやく国民の負担軽減へ一歩踏み出した政策だ。
この流れを止めることなく、真に生活者の視点に立った政治を求めたい。

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ABOUT ME
TAKA
TAKA
理学療法士/ビール
理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。
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