『高市政権の現実 ―消費税減税を拒む理由―』
臨時国会、そして高市政権の船出
11月4日、臨時国会が開かれた。新たに就任した高市総理は、外交・防衛分野で強気な姿勢を見せつつも、経済と物価の問題では従来の自民党路線から大きく外れてはいない。
就任直後から支持率は高く、国民の期待も大きい。しかしその実態は、これまでの総理たちと同じ「テンプレート回答」を繰り返す姿にほかならない。国民目線を掲げていた選挙前の姿勢が、政権を握った瞬間に一転した印象を受ける。
ガソリン暫定税率廃止の裏で
高市政権が打ち出した目玉のひとつが、ガソリン暫定税率の年内廃止である。12月31日にガソリン税の暫定部分を撤廃、軽油税は来年4月1日に廃止予定と発表された。
一見すれば国民負担を減らす前向きな政策だが、これもまた裏がある。代替財源の議論を引き延ばし、「財源が決まらないから実行できない」という構図を永遠に続けるつもりなのではないか――そんな懸念を抱かざるを得ない。
消費税減税を拒む「時間」の論理
国民の多くが最も望んでいるのは、ガソリン税よりも「消費税の減税」である。れいわ新選組が国会で「消費税廃止、最低でも減税を」と訴えたが、高市総理の答弁は明確だった。
「物価高対策としてすぐ対応できることを優先すべきであり、消費税率の引き下げには一定の時間がかかる」。
理由は「レジシステムの改修に時間がかかるから」。だが、増税時にはそのような言い訳は一切なかった。しかも、同じ税制改定であるガソリン税の廃止は2か月後に実施予定だ。ならば、なぜ消費税減税だけが「時間がかかる」のか。矛盾は明白である。
給付税額控除に3年? 本末転倒の政策設計
総理は消費税減税の代替案として「給付税額控除」を検討すると述べた。しかし、この制度設計には3年かかると自ら語っている。
つまり、1年で可能な消費税減税は「時間がかかる」と見送り、3年かかる新制度を「検討する」と言う。物価高に苦しむ国民にとって、どちらが「すぐに対応できること」なのかは明らかである。
労働規制緩和と賃金停滞のジレンマ
さらに高市政権は、労働時間の規制緩和にも踏み込む姿勢を見せている。名目は「働き方改革」だが、実態はサービス残業の合法化に近いものだ。
賃上げを掲げながら、その足を引っ張るのが消費税であることを、政府は理解していないのだろうか。
結局、消費税を維持しながら労働規制を緩めるという政策は、「所得は増えず、働く時間だけが延びる」結果を招く。これでは国民生活の再生どころか、疲弊を深めるだけである。
支持率80%の盲点
支持率80%という数字の裏で、国民の7割以上が消費税減税を望んでいる。このズレを放置したままでは、政権への信頼は長く続かない。
人気と期待の間にある「政策の空洞」。そこに早くも歪みが見え始めている。
国民が問うのは、スピードでも言葉でもない。生活の実感に寄り添う政治である。
