政治・経済

『お金は誰かの負債 ― バランスシートで読み解く貨幣の正体』

taka

お金は「資産」ではなく「負債」でもある

私たちにとって、一万円札は資産であり、債権である。
しかし同時に、それは日本銀行にとって「負債(債務)」にあたる。
日銀のバランスシートには、発行した現金が「負債」として記載されている。
つまり、あなたの財布の中の紙幣は、日銀があなたに対して負っている債務の証明書なのだ。
この関係を理解することが、「お金の正体」を知る第一歩となる。

バランスシートが語る「お金の構造」

企業や銀行など、すべての経済主体はバランスシートで財政状態を管理している。
左側(借方)には資産=債権、右側(貸方)には負債=債務が記載される。
その合計は常に一致し、経済全体の債権と債務は常に釣り合う。
お金とは、この「債務と債権の対応関係」が記録されたものであり、
まさにバランスシートそのものが貨幣の構造を映しているといえる。
紙幣はモノのように見えるが、本質は単なる「数字としての債務と債権の記録」にすぎない。

預金もまた「銀行の負債」

あなたの銀行預金は、銀行にとって「負債」である。
銀行はあなたからお金を預かるのではなく、借りている。
だからこそ、銀行は預金に対して利息を支払う。
一方で、あなたにとって預金は資産、すなわち銀行に対する債権である。
日本の銀行全体では、普通預金・定期預金・譲渡性預金を合わせて
数百兆円に上る「負債」が計上されている。
銀行預金とは、数字の上で記録された「貸し借りの関係」にほかならない。

弁済で動く経済の仕組み

経済の本質は「債務の弁済」である。
買い物も借金の返済も、すべては誰かが負う債務を、
自らが保有する債権で相殺する行為にすぎない。
スーパーで支払う一万円札は、日銀に対するあなたの債権であり、
それを使ってスーパーに対する債務を弁済している。
お金は社会の中で債権者が移動するたびに、信用の記録として姿を変える。
この「信用の移動」こそ、経済を動かす見えないエンジンなのだ。

4000年続く「負債としての貨幣」

お金が「負債」として存在する構造は、
メソポタミアの楔形文字に刻まれた粘土板にまで遡る。
そこには「誰が誰に小麦を借りたか」という債務の記録が残っている。
その本質は、現代の現金や銀行預金と変わらない。
お金とは、いつの時代も「誰かの負債であり、誰かの資産」。
リディア王国の硬貨よりもはるか昔、
貨幣はすでに「信用の記録」として生まれていたのである。

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ABOUT ME
TAKA
TAKA
理学療法士/ビール
理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。
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