『お金が動くと経済は成長する――需要と豊かさの真実』
経済成長とは「お金」ではなく「所得」の増加
経済成長とは何か。それは単にお金の量が増えることではない。
実質GDP――つまり、物価の影響を除いた「生産の量」の増加こそが、真の経済成長である。
GDPは「生産」「需要」「所得」の三つの側面が必ず一致する。モノやサービスを生産し、それが購入され、所得が生まれる。この循環が絶えず続くことで経済は成り立っている。
お金が生む所得の仕組み
たとえ一万円札が1枚しかなくても、それが何度も支出と受取を繰り返せば、GDPは何倍にも膨らむ。
Aさんがリンゴを買い、Bさんがバナナを買い、Cさんがミカンを買えば、たった一万円で三万円分の所得が創出される。
これが経済の本質であり、「お金の回転率」こそが豊かさを決定する。
経済成長を止める「お金の不足」
もし生産力が上がっても、お金の供給が足りなければ、モノは売れず価格は下がる。
それがデフレーションであり、国民の所得を縮小させる原因となる。
フビライ・ハンが紙幣を増やしたのは、南宋併合によって人口と生産量が急増したためだった。
お金の量を増やさなければ、経済はデフレに陥る。だが、過剰に発行すればインフレが起きる。重要なのは「経済の生産力に見合ったお金の供給」である。
貯蓄は善か、悪か
個人にとって貯蓄は安心をもたらすが、社会全体ではお金の流れを止め、所得の減少を引き起こす。
Aさんから受け取った1万円をBさんが使わなければ、その瞬間に「所得の連鎖」は途切れる。
これが日本を長く苦しめてきたデフレーションの正体である。
豊かさを取り戻すために
お金は「使われるとき」に初めて価値を持つ。
政府が財政支出を拡大し、民間がそれに応じて投資や消費を進める――これがデフレ脱却の道だ。
「もったいない」という節約意識が、むしろ自らの首を締める時代に私たちは生きている。
お金は貯めるためでなく、回すためにある。需要が生まれるとき、経済は動き出し、国民の所得は増える。
経済成長とは、私たち一人ひとりが「お金を使う勇気」を取り戻すことから始まるのだ。
