給付付き税額控除と消費減税の本質的な違い
二つの積極財政、その目的は同じか
いま政府と一部野党が検討を進めている給付付き税額控除は、税や社会保険料の負担が重い層に手取りを増やす仕組みとして位置づけられている。低所得者には給付金を上乗せし、中間層には負担軽減を行うという構想であり、物価高と賃金停滞に苦しむ国民を支える直接支援策といえる。
一方、多くの国民が求める消費税減税もまた積極財政であるが、そのターゲットと経済効果は大きく異なる。両者の違いを理解することで、経済のどこを立て直すべきかが見えてくる。
給付付き税額控除の特徴と限界
給付付き税額控除は、家計に直接的な恩恵が届く仕組みとして有効であり、一定の経済効果も見込める。ただし、その効果は多くの場合、末端の症状に対する対処療法の域を出ない。
支援の中心が家計に偏ることで、経済の基盤を支える事業者への恩恵は限定的となる。企業の経営環境が厳しいままでは賃上げの余力は生まれず、国民が増えた手取りを消費に振り向ける余裕も育ちにくい。将来不安が残る限り、家計は貯蓄や投資に回りやすく、需要の押し上げ効果は限定されるといえる。
さらに、全国民の所得を正確に把握するためのシステム整備には時間と費用がかかり、運用も複雑になる。むしろ単純な定額給付の方が迅速で明快という指摘もある。
消費税減税がもたらす広範な効果
消費税を引き下げた場合、その恩恵は家計だけでなく事業者にも一斉に及ぶ。
まず、企業の税負担が確実に軽くなり、経営が改善することで賃上げの余裕が生まれる。製造、加工、物流、販売といった経済の全段階で負担が軽くなるため、全国的な活性化が期待できる。
中小企業の体力が戻れば雇用が安定し、地域経済も潤う。生活保護や失業給付などの支出も抑えられる可能性があり、物価下落によって消費者の負担も減少していく。こうした循環が成立して初めて、経済の歯車が自然に回り始めるといえる。
なぜ消費減税に踏み切れないのか
国会答弁では、消費税減税を実施しない理由として「レジシステムの改修に時間がかかる」と説明されることがある。しかし、この説明には多くの疑問が呈されてきた。
それにもかかわらず同じ理由が繰り返される背景には、政府内部の力学や政策判断の制約があると考えられてきた。答弁内容からは、政権の意向だけでは動かせない構造が存在することを示唆するとも受け取れる。
真に時間を要するのは、レジの改修ではなく、政府内部の意思決定そのものの刷新である。しかし、それを公に語るわけにもいかず、政治家の発言には限界が生じる。
景気回復に必要なのは「両輪」
給付付き税額控除は有効だが、単独で経済を押し上げる力は限定的である。一方で、消費税減税は日本全国の企業活動を底支えし、家計の不安を和らげる効果が期待できる。
本来、国民の消費を後押しし、企業の活力を取り戻すためには、両方を同時に行うことで相乗効果が生まれる。消費税を引き下げ、家計に直接支援を行い、企業と国民の双方が未来に希望を持てる環境を整えることこそ、景気浮揚の本筋といえる。
いま必要なのは、国民が知識を持ち、政策の方向性を見極め、必要な施策の実行を後押しする姿勢である。
