「積極財政」の看板と乏しい対策のギャップ
臨時国会で見えた経済政策の方向性
十一月四日から本格的に始まった臨時国会では、代表質問や予算委員会で物価対策と経済政策が中心議題となっている。新政権は「責任ある積極財政」を掲げ、前政権からの転換を印象づけてきた。期待感を持つ国民も少なくなかったが、実際に示された施策は想定より小ぶりで、特に消費税減税を見送った点は大きな失望を生んだといえる。
消費税減税を避ける理由とその矛盾
最も効果の高い物価対策として繰り返し指摘されてきた消費税減税について、政府は今回も「レジシステムの改修に時間がかかる」と説明した。だが、これまで同様の指摘に対する疑問は多く、ガソリン税の暫定税率変更には短期間で対応する一方、消費税だけは一年以上必要とする矛盾も残ったままである。
この状況を見る限り、政権内部の事情や党内の意向が強く働き、政策判断を縛っている可能性は否定できない。仮に減税が最も効果的だと理解していたとしても、与党の枠組みでは踏み込めないという構造が浮き彫りになったといえる。
クーポンとポイント中心の対策が示す限界
政府が示した経済対策案には、地方交付金の拡充とともに、お米券やプレミアム商品券、地域ポイントの発行などが並ぶ。だが、これらは家計支援として即効性がある一方、根本的な価格上昇には届きにくい。
プレミアム商品券は、一定額を支払うことで利用額が増える仕組みだが、そもそも支払う余裕のない世帯には届かない。お米券についても、食料品高騰に対する直接支援としての意味はあるが、供給側の構造問題に手を入れないままでは持続性に欠ける。
現金給付は人気がなかったとされるが、金額が少なすぎたこと、減税との比較で魅力を欠いたことが要因であり、給付そのものが否定されたわけではない。この点を整理せず「人気がないからやらない」と結論づける姿勢には、政策本来の目的が薄れている印象が残る。
積極財政の名に反する規模の小ささ
今回の対策で目立つのは、一人あたり換算で内容がかなり小規模にとどまる点である。冬場の電気・ガス料金の支援も平均月千円程度。米券や地域ポイントを合算しても、過去の現金給付二万円に満たない規模に収まる。
一方で、防衛費は前倒しで二%水準へ着手すると明記され、政策の優先順位がどこに置かれているのかは明らかである。年収の壁問題の改善は二〇二六年度に結論とされ、給付付き税額控除の制度構築には数年を要する見込みであるなど、家計負担を軽減する取り組みは先送りが目立つ。
国民に広がる「積極財政」の誤解と影響
現政権は「積極財政」を掲げているものの、示される施策の規模と内容からは、本来の積極財政とは程遠い印象が残る。
このままでは「積極財政は効果がない」という誤った認識が広がり、将来の政策議論の土台まで揺らぎかねない。国民の生活を改善するためには、給付と減税を適切に組み合わせ、経済全体の循環を生む施策が必要である。名称だけの積極財政ではなく、実態を伴う政策運営こそが求められるといえる。
