「思考は現実化する」は本当か?自己啓発本100冊から見えた“夢とイメージ”の扱い方
「理想の自分を思い浮かべるべき」問題
「理想の自分をイメージしろ」。
自己啓発本を読んでいると、必ずと言っていいほどこの教えが登場する。どうやら成功者は皆、自分の未来像を鮮明に描いて生きているらしい。
僕が締切に追われながら必死に文章を書いているのも、きっと理想の自分を想像する習慣がなかったからだろう。明日からは、「村上春樹のように優雅に文章を書く自分」を思い浮かべながら生活してみたい。
伝説の自己啓発書『思考は現実化する』
自己啓発界の大御所と言えば、ナポレオン・ヒルの『思考は現実化する』だ。1937年の刊行以来、世界中で読み継がれている。
600ページもの分量にもかかわらず、基本メッセージはとてもシンプル。
「思考は現実化する」
これだけである。
本を読み進めても、延々とこの主張が続く。
そして「信念を持ち続ければ必ず成功する」「疑った瞬間に失敗が訪れる」というロジックが何度も何度も強調されている。
成功は、成功を確信する人のもとに訪れる。少しでも失敗を意識すれば失敗する。
極めて強い確信を持つことが求められるスタイルであり、少しでも「それ本当?」と思った瞬間に失敗が確定してしまうらしい。
読む側にはもはや疑う余地が許されない。
「夢を思い描くのが義務」になってしまった人たちへ
『思考は現実化する』の影響か、「夢を明確に描かないといけない」という義務感を持つ人も多い。
そんな人への処方箋として紹介されているのが『夢をかなえるゾウ』である。
勝手にワクワクしてしまうような妄想レベルでいい。
自然に楽しく思い描けるのが夢やねん。
こちらは「思い描くのが辛いなら、それは夢じゃない」という立場だ。
宝くじで2億円当たったと勘違いして、「何に使おうかな〜」と想像している主人公の姿が例として描かれている。
要するに、義務感ではなく楽しさが先なのだ。
一方、『思考は現実化する』では「目標を紙に書いて毎日読み上げ、成功する自分をイメトレし続けろ」という、やや体育会系のアプローチが重視されている。
つまり、夢の描き方は2種類ある。
- 徹底的にイメトレを積み重ねるタイプ
- 妄想レベルで楽しく夢を見るタイプ
どちらを選ぶかは、自分の性格次第だ。
「紙に書け」「毎日書け」そして極めつけは…
多くの本では「夢は紙に書いて貼っておくべき」というアドバイスが繰り返し登場する。
その中でも特に熱量が高いのが『神メンタル』だ。
- 目標は紙に手書きしろ
- 書くのを毎日繰り返せ
- 頭に刻み込むまで続けろ
という具合で、何度も主張してくる。
そして極めつけがこちら。
パソコンのパスワードを「自分の目標」にすることをおすすめします。
つまり、毎日ログインするたびに目標を入力すれば、その分強烈に頭に刻み込まれるという理屈である。
たしかに理屈としては分かる。
ただ、僕のパスワードが「3man-bu」(売上3万部の目標)になったら、たぶん全員にバレてしまう。
総務省が推奨する「推測されにくいパスワード」という条件には確実に反するが、『神メンタル』の世界ではそんなことは気にしてはいけない。
なぜなら、
疑う人に成功は訪れないから。
結論:「思い描き方」は自由
自己啓発本を100冊読み比べてわかったことは、
「理想の描き方に正解はない」ということだ。
- ストイックに貼り紙を読み続けるタイプ
- 楽しく妄想を広げるタイプ
- パスワードに設定してまで刻み込むタイプ
やり方はさまざま。
大切なのは、自分がストレスなく続けられる方法を選ぶことだろう。
