ビジネス書100冊でわかった「時間術の正解」──猛獣に食い殺されずに生きるために
「時間術」はビジネス書最大のテーマだった
ビジネスパーソンはとにかく「時間」を気にする。
そのため、ビジネス書の世界では「時間術」が一大ジャンルになっている。
では、100冊読んでみると、著者たちは時間をどう使えと言うのか?
結論から言うと、ここでも教えは真逆である。
教え①:勤務時間の外にこそ“本物の時間”がある
まずは100年以上前の古典、『自分の時間』(アーノルド・ベネット)。
著者はこう断言する。
1日24時間で充分生きている人はほとんどいない
そして彼が提案するのは、
- 勤務の8時間は“生活費を稼ぐための義務”
- それ以外の16時間を 徹底的に充実させろ
というものだ。
この16時間はすべて、自分の心と身体を成長させるために使うべきだ
これは現代人にとても刺さる。
「好きなことを仕事にしなきゃ!」と焦ってキャリアを崩壊させるより、
本業は生活費、16時間を“自分の人生”に使う
という発想はずっと健全だ。
実際、僕は「好きなことで生きていく」に囚われて炎上して消えていったYouTuberを何人も見てきたので、ベネットの主張には深く納得した。
教え②:そもそも会社に時間を渡すな(猛獣理論)
しかし、これを真っ向から否定する男がいる。
そう、ホリエモンである。
彼の『時間革命』には、かなり過激な比喩が登場する。
他人のせいで時間が奪われている状態は
「生きながら猛獣にゆっくりと食い殺されている」のと同じだ
いや、過言だと思う。
役に立つか微妙な報告書をつくる時間と、猛獣に食われる時間を同列にはできない。
だがホリエモンは本気だ。
だからこそ、会社勤めや会議に費やす時間そのものを、
「人生の切り売り」「猛獣の餌になる行為」
と断じている。
つまりベネットのように、
勤務時間8時間は仕方ない。
だから残り16時間を使って幸せになろう。
という考え方そのものが、
ホリエモン的には「敗北宣言」なのである。
教え③:優先順位の低い予定は“そもそも受けるな”
第三の立場が『時間術大全』のGoogleエンジニアたち。
彼らもまた“時間を奪われる問題”を指摘するが、ホリエモンほど過激ではない。
むしろ現実的だ。
優先順位の低い約束は、最初から受けないのが一番いい
これが核心である。
会議、雑用、頼まれごと……
すべてに「はい」と言っていると、
いつの間にか自分のスケジュールは真っ黒になり、
本当に大切なことに手が回らなくなる。
僕自身、まさにそれで今締切に追われている。
「はい」と言った自分のせいとはいえ、今の状態は、
生きながら猛獣にゆっくりと食い殺されている
……いや、これはさすがに過言だが、気持ちはわかる。
時間術の教えはこうして完全に割れた
まとめると、時間術には3つの派閥が存在する。
● ベネット派(穏健派)
- 勤務時間は仕方ない
- その代わり残り16時間を最大化すれば人生は豊かになる
● ホリエモン派(過激派)
- そもそも会社に人生を渡すな
- 他人に時間を奪われるのは“猛獣に食い殺される行為”
● Google派(現実派)
- 優先順位の低い予定は受けない
- 「ノー」を言えないとスケジュールが破壊される
それぞれ主張は違うが、根底にあるのはひとつ。
「自分の時間を他人に明け渡すな」
という考え方だ。
結論:ムリな予定には「ノー」と言って生き延びよう
僕がこの原稿を締切ギリギリで書いているのは、
「ノー」と言えなかったせいである。
つまりこの状態こそ、ホリエモン的にいうところの、
生きながら猛獣にゆっくりと食い殺されている
状況なのかもしれない。
なので読者の皆さんには強く言いたい。
予定は選ぼう。時間は奪われる前に守ろう。
でないと、気づいた時には猛獣が横からガブッと来ている。
