ビジネス書100冊で分かった「成功者を真似ろ」論の危険な香り──メンター・自己投資・高額学びのリアル
成功者を真似れば成功できる?──ビジネス書に溢れる“模倣のすすめ”
ビジネス書には昔から「成功者の真似をすれば成功できる」というメッセージが溢れている。
考えてみれば当然で、ビジネス書とは成功者の思考や習慣をまとめたものだ。
「成功者の真似をしても成功できません」などと言い出したら、その本自体の存在意義が崩壊する。
だからこそ、ビジネス書には「成功者の習慣を模倣せよ」という教えが必然的に並ぶ。
ただし、その内容は玉石混交。100冊読んでみると、「それ本当に成功に必要?」と首を傾げる教えも大量に登場する。
ここでは、代表的な“成功者を模倣せよ”系の主張を見ていこう。
「成功者の習慣100」を信じよ──なんでも成功者の習慣になる
ナイジェル・カンバーランド『成功者がしている100の習慣』は、
成功する人は「モデル」から学ぼうとする
と強調する。
たしかに、「約束を守る」「信頼関係を大切にする」など、いかにも成功者らしい習慣が並ぶ。
しかし途中から「ボランティア活動」「親と仲良くする」「ボディランゲージを活用」といった、やや主観的な項目が増えていく。
ここで「本当にそれ成功に関係ある?」と疑うのはNGらしい。
素直に受け入れるのが“成功者の第一歩”だというのが本の主張だ。
「成功者のメンターに従え」──なぜか宗教感が強い
さらに踏み込んだのが『億を稼ぐ人の考え方』(中野祐治)。
この本では、
成果を出したいなら、徹底的に1人のメンターについていくことです。
と繰り返し主張される。
著者に成功を与えたのは、27歳で月収300万円というメンター。
とにかく「メンターの言うことを聞け」。
「親や上司の助言は聞かなくていい」。
とにかく“従うべきは一人の先達だけ”。
ここまで来ると、読んでいる側は少し不安になる。
ネットワークビジネスでよく見られる構造と似ている気もするし、健全な助言と依存の境界が曖昧になりやすい。
だが本はきっぱりと言い切る。
従えば成功できる。疑うな。付いていけ。
月収23万円で15万円を自己投資へ──FPが震える支出バランス
そして『億を稼ぐ人の考え方』最大のパンチラインがこれ。
手取り23万円のうち15万円を自己投資に使った。
著者自身の体験だという。
家賃や食費がどうなっているのかは不明だが、手取りの65%以上を「学び」に投入していたらしい。
もし「そのやり方は危険なのでは」と感じても、それは“成功者の思考が足りない証拠”なのだそうだ。
メンター曰く、
「貧乏は今のうちしかできない。それを楽しめ」
とのこと。
ここまで来ると、著者が搾取されているのでは? と心配になるのは普通の感覚だと思う。
だが本の世界では、それすら“未熟な思考”として片付けられてしまう。
成功者を真似ることは本当に近道なのか?
ビジネス書100冊を読んで分かったのは、
「成功者を真似ろ」という言葉は便利なフレーズであり、必ずしも安全でも合理的でもない
ということだ。
もちろん参考になる事例は多い。
だが、“1人のメンターに従え”や“無理な自己投資を続けろ”といった極端な教えは、必ずしも万人向けではない。
成功者の習慣は、あくまでその人の背景・環境・資質とセットで成立したものだ。
読者がまったく同じ環境にいない以上、単純コピーで同じ結果が出る保証はどこにもない。
むしろ、
- 正しい助言か
- 自分に合うか
- 家計を壊さないか
- 信頼できる相手か
これらを見極める力のほうがよほど重要である。
まとめ
- ビジネス書は「成功者の真似をすれば成功できる」と強調しがち
- しかし中には“メンター崇拝”“家族の助言無視”“過度な自己投資”など危険なメッセージも含まれる
- 成功者の真似は、大事だが盲信する必要はない
- 最も大事なのは「見極める力」と「自分の生活を壊さないラインの判断」
成功者の背中を追う前に、まずは足元の生活を整えること。
ビジネス書100冊を読んでようやくわかった、地味だけど一番大切な教訓だ。
