『補正予算と国土計画が示す日本経済の盲点』
補正予算が繰り返される背景
高市内閣が決定した17.7兆円の補正予算は、表向きには景気対策として位置付けられているが、その背後には深い構造問題が横たわる。
現在の日本は、基礎的財政収支、いわゆるプライマリーバランス黒字化目標に縛られ、通常予算の拡大が事実上できない状況にある。国の維持に必要な支出を確保するため、結果として補正予算を積み増す方法を続けているというわけである。
これは、財務省の“PB黒字化至上主義”と、政治が求める現実的な支出の折衷点ともいえる。
サプライロス型インフレの本質
現在の日本が直面している物価高は、供給側の力が弱まることで起こるサプライロス型インフレであり、需要過熱によるインフレとは性質が異なる。この状況を改善するには、ガソリン税や消費税の引き下げといった減税が効果的であると同時に、生産性向上への投資を促す政策が欠かせない。
企業が投資に踏み切るには、継続的で安定した需要の存在が前提となる。しかし、補正予算はあくまで“一度限り”の財政措置であり、将来にわたり需要が続く保証にはならない。そのため、企業が本格的な投資を控える構造が生まれている。
必要なのは「減税」と「国土計画」
日本経済に必要なのは、短期の補正に依存する対処ではなく、長期的な視野に基づく計画である。特に重要なのが国土計画の復活であり、これにより政府が継続的な需要拡大を明確に示すことができる。
予算は単年度主義に従って毎年編成すればよく、問題は政府が長期の方向性をオープンにし、社会全体に安心感を提供できるかどうかにある。
単年度主義の矛盾と政治の役割
財務省は単年度主義を理由に国土計画を廃止してきた一方、自らはPB黒字化という長期緊縮計画を閣議決定させてきた。この矛盾は看過されるべきではない。
今後、国土計画の復活が議論されれば、財務省は必ず単年度主義を盾に反対するだろう。その際、政治は「ではPB目標は何だったのか」と堂々と反論し、国の未来に必要な計画を推し進める姿勢が求められる。
長期的な視点を持つ政策こそが、日本経済の再生を支える土台になるといえる。
