フランクル心理学の核心──“人生にイエスと言う”とは何か

「人間は、どんなときでも人生にイエスと言うことができる」——
これは、精神科医ビクトール・フランクルが残したもっとも象徴的な言葉だ。

ある日、偶然出会った“フランクル好きのおじさん”が語っていたのは、まさにこの一点だった。
彼との会話を振り返ると、フランクル心理学の本質は驚くほどシンプルでありながら、深い。
そして、その本質は現代を生きる私たちにこそ必要な視点でもある。

この記事では、おじさんとの会話から浮かび上がった フランクル心理学の核心 を、誰にでもわかる形で整理してお届けしたい。

■ フランクル心理学とは“人生の意味”を扱う心理学

フランクル心理学（ロゴセラピー）は「人はどんな状況でも人生に意味を見出せる」という前提に立つ。
だからこそ、彼の心理学は 「生きる意味の心理学」 と呼ばれてきた。

フランクル自身は第二次世界大戦中にアウシュヴィッツの強制収容所を経験した。
過酷すぎる環境の中で、希望を奪われ、生きる意味を失った人々を目の前にしながら、フランクルはある事実に気づく。

◎ 人間は状況に左右されても、“どう向き合うか”という最後の自由だけは奪われない。

この気づきこそ、ロゴセラピーの土台になっている。

■ 実存的虚無感は「意味が見えない」という人間の普遍的な経験

おじさんはこう言った。
「“実存的虚無感”って言葉を最初に使い始めたのもフランクルだ」と。

実存的虚無感とは、
生きる意味が見えない
何をしてもむなしい
未来が霧のようにぼやける
といった“存在の空洞”のような感覚のこと。

現代では、仕事のストレスや人間関係、社会のスピードに追いつけない不安など、さまざまな要因からこの虚無感を抱く人が増えている。

しかしフランクルは、虚無感そのものが悪いのではなく、
“意味が揺らぐのは人間として自然なこと”
だと捉えた。

重要なのは、「虚無感を消すこと」ではなく、
虚無の中でどんな姿勢を選ぶか
なのだ。

■ フランクルが教える「人生にイエス」とは何か

おじさんの話で印象的だったのは、
「人生にイエスと言う」という表現だった。

これは、どんな状況でも無理に前向きになる、という話ではない。

フランクルが言いたかったのは、
“人生は自分に問いかけてくる。私たちはその問いにどう答えるかを選べる”
ということだ。

つまり、
・状況が良くないときでも
・気力が戻らないときでも
・意味がわからないときでも

人は、
「どんな態度でその状況に向き合うか」を選び続けられる。

これが“人生にイエスと言う”という姿勢であり、
フランクル心理学の核心と言える。

■ 日常で活かせるフランクル心理学の3つのポイント

おじさんの話を整理すると、フランクルの教えは次の3点にまとまる。

① 意味は“見つける”ものではなく“気づき始める”もの

生きる意味は突然手に入るものではなく、
・今日の小さな嬉しさ
・誰かの一言
・日常のなかで得られる実感
こうした“小さな出来事の集まり”の中にゆっくり育っていく。

② 苦しい状況でも“態度だけは選べる”

環境を完全にコントロールすることはできない。
しかし、
・逃げるのか
・立ち止まるのか
・受け止めるのか
その選択を決める自由だけは奪われない。

③ 今の自分にできる役割を丁寧に行う

フランクルは「意味は行動の中に見つかる」と語った。
大きな目標ではなく、
今日一日を丁寧に生きること
その積み重ねが“意味の道筋”を形づくる。

■ フランクル心理学がくれた視点

おじさんが最後に言った言葉が印象的だった。

「意味ってのはな、探し回るより、日々の中で育っていくんだよ」

フランクル心理学は、虚無感を魔法のように消してくれるものではない。
けれど、「どんなときでも人生にイエスと言える」という視点は、
暗闇の中でも前に進むための“かすかな灯り”になる。

人生の意味を急いで見つける必要はない。
意味は、あなたが選んだ“今日の態度”の中で少しずつ形を帯びてくる。

フランクル心理学はそのことを静かに教えてくれる。

TAKA

理学療法士/ビール

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理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。