「使命とは“命の使い方”である──フランクル心理学が教える働く意味の原点」
使命とは“命の使い方”である──フランクル心理学が教える働く意味の原点
「自分の仕事には意味がない」
「誰にでもできることしかできていない」
「本当にやりたいことが何かわからない」
多くのビジネスパーソンが抱えるこの悩みを、
フランクル心理学は根底からひっくり返します。
おじさんとの対話の中で語られたのは、
「使命=命の使い方」 という視点でした。
これは、働く意味が見えなくなった現代人にとって非常に強力な“軸”になります。
■ 「人生にイエスと言う」=「命にイエスと言う」
フランクルの代表作
『それでも人生にイエスと言う』 の原題には、重要なヒントがあります。
《Leben》──人生と訳されるが、本来は“命(Life)”を意味する
おじさんはこう解釈します。
「どんな時でも、人間は“命”にイエスと言うことができる」
つまり、
- 自分の人生がどうであれ
- 苦しみがあろうと
- 絶望していようと
命そのものを肯定できる。
フランクルが自殺を「人生のルール違反」と言ったのも、
命を否定する行為だからです。
■ 「人生からの問い」は「命からの問い」へと深まる
これまでのフランクル心理学の話では、
- 人生は問いを投げかけてくる
- 私たちはその問いに答える存在である
という構図がありました。
しかしおじさんはさらに踏み込みます。
「人生からの問い」=「命からの問い」
そして、その問いにどう答えるか──
これこそが “使命(=命の使い方)” だと言うのです。
■ 使命は「やりたいこと」ではなく「与えられた務め」
おじさんは言います。
「使命とは“与えられた任務”。自分が何をしたいかではなく、
何かから与えられた問いにどう答えるか、だ」
これは現代的な「やりたいことで生きる」とは真逆です。
- 自分が好きなこと
- 自分がやりたいこと
- 自分が望むキャリア
これらは“自分発”の動機です。
しかしフランクルの使命観は、
「自分を超えた何か(=命)が求めていることに応える」
という “外発的でありながら主体的” な構造を持っています。
■ 職業に意味があるのではなく、取り組む姿勢に意味が宿る
主人公が悩んだのは、
「誰にでもできる仕事をしている自分に意味があるのか?」
という問いでした。
おじさんはフランクルの言葉を引用します。
「どんな職業についているかはどうでもいい。
重要なのは、自分の持ち場でどれだけ最善を尽くしているかだ」
これは、ビジネスの現場にそのまま当てはまります。
- 雑務をしていても
- 単純作業をしていても
- 目立たないポジションでも
そこで“最善を尽くす”ことは、
世界でその人にしかできない役割になる。
逆に、どれだけ華やかな仕事でも、
最善を尽くさなければ意味は生まれません。
■ 「私の人生に意味はない」と感じた瞬間──問いは反転する
主人公は言います。
「どうしても今の仕事に意味を感じられない」
そこでおじさんはこう返します。
「じゃあ、この公園で生きている俺の人生にも意味がないのか?」
主人公は否定します。
「おじさんは僕を救ってくれている。
おじさんの人生に意味がないはずがない」
するとおじさんは言います。
「俺の人生に意味があるとすれば、それを与えているのは“あんちゃんの命”だ」
ここで示されたのは、
使命とは“誰かの命と交わるところで生まれる”
という事実です。
■ 自分にばかり関心を向けると、使命は見えなくなる
おじさんはこう続けます。
「自分、自分、自分……。
自分の中ばかり探しても幸せは見つからない。
周りを見ろ。必ず誰かが助けを求めている」
ビジネスシーンでも同じです。
- 自分の評価
- 自分の成果
- 自分のキャリア
ここに意識を寄せすぎると、
使命は見えなくなります。
使命は常に 「他者」 の中に現れるからです。
- 顧客の困りごと
- 同僚の悩み
- チームの課題
- 家族の苦しみ
- 社会の痛み
それらと向き合う瞬間に、
命が何を求めているかが立ち上がってくる。
■ 使命とは“命の関係性”の中で生まれる
主人公は母親からの電話を思い出します。
- もしあの時、自分が死を選んでいたら
- 両親はどれほど苦しんだか
- 電話が自分を救い、同時に両親も救っていた
使命とは、命と命の間に生まれる“関係性”そのものなのです。
■ 最後に──使命は探すものではなく“応えるもの”
フランクル心理学が示す使命の本質は、こうまとめられます。
- 使命とは「命からの問い」である
- 自分の中にはない。他者や状況の中に現れる
- 職業ではなく「最善を尽くす姿勢」が使命を形づくる
- 命にイエスと言う生き方が使命を育てる
- 使命とは、自分を超えた何かへの応答である
あなたが今向き合っている状況は、
すべて“命からの問い”です。
仕事の悩みも、
迷いも、
苦しみも、
その問いにどう答えるかが、
あなたの使命となり、
人生に意味を生み出していきます。
