政治・経済

ガソリン暫定税率廃止と財源論の不整合を問う

taka

半世紀越しの減税が示す異例の構造

衆院財務金融委員会で、ガソリン税と軽油引取税の暫定税率廃止が全会一致で決まった。二年間の時限措置として始まった制度が、半世紀を経てようやく減税に至った事実は、日本の税制運営の硬直性を象徴している。軽油引取税は地方税であるため、今後は交付金措置が必要となるが、制度の見直しが動き始めたという点は大きい。
もっとも、法案は付則で「安定財源の検討」を求めており、実質的に財源論が先送りされただけともいえる。忘れ去られるのが最も健全という皮肉な状況が生まれている。

減税だけに財源論が噴き出す不思議

興味深いのは、補助金には全く出てこなかった財源論が、減税の場面になると急に騒がれる点である。ロシア・ウクライナ戦争後の価格高騰を受けて、政府はガソリン補助金にすでに8兆円を投じてきた。その財源は当然のように国債であり、誰も「財源は?」とは言わなかった。
一方で、1.5兆円の恒久的減税には、すぐさま財源問題が取り沙汰される。本来、支出である補助金の方が財源を必要とするはずだが、議論の熱量はなぜか逆転している。この不整合こそ、日本の財政議論が「政治ゲーム化」している証拠といえる。

国債発行という当たり前の仕組み

政府の財源は国債である。国債以外に恒常的で実効性のある財源は存在しない。政府はまず国債を発行し、支出を行う。その後、徴税によって貨幣を回収する。この流れは「スペンディングファースト」と呼ばれ、国家財政の仕組みとしては単純な事実である。
しかし、多くの政治家や国民にとって、この仕組みは直感と一致しない。家計は「稼いでから使う」が、政府は「使ってから回収する」。その構造の違いが理解を阻んでおり、まるで天動説から地動説への転換のような心理的抵抗が生まれている。

財源論に潜む政治ゲームの影

財政健全化という名のもとに掲げられ続けてきたプライマリーバランス黒字化目標は、現実路線の補正予算と両立しない。補正予算では国債を発行し、実質的に支出拡大を容認しているにもかかわらず、理念としてのPB目標は依然として維持されている。この二重構造が、企業の投資判断を鈍らせ、供給能力を低下させる一因にもなっている。
ガソリン減税にも同様の矛盾が見える。減税には財源論を叫びつつ、現実的な対処として巨額の補助金を投じる。制度の整合性を無視した場当たり的対応が繰り返され、問題は解決しないまま膨らんでいる。

不整合を正し、財政の「現実」を取り戻す

本来、財政議論は数値のつじつま合わせではなく、国家がどのような社会を目指すのかという理念に基づくべきである。減税と補助金の扱いが逆転し、国債発行の仕組みが正しく理解されない状況では、健全な財政運営は成立しない。
一つ一つの不整合を解きほぐし、政治ゲームではなく事実に基づいた議論を積み重ねること。遠回りに見えても、それが最も確かな道といえる。

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ABOUT ME
TAKA
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理学療法士/ビール
理学療法士として臨床に携わりながら、リハビリ・運動学・生理学を中心に学びを整理し発信しています。心理学や自己啓発、読書からの気づきも取り入れ、専門職だけでなく一般の方にも役立つ知識を届けることを目指しています。
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