人生は思い通りにいかないことだらけです。予期せぬ事故、理不尽な扱い、不公平な状況……そのたびに「なぜ自分だけがこんな目に遭うのか」と嘆きたくなることもあるでしょう。
しかし、嘆きや愚痴は現実を変えてくれません。ストア派の哲学者エピクテトスは『語録』の中で、こう鋭く問いかけます。
「『全能の神よ、どうすればこの苦しみから抜け出せるのでしょうか?』と泣き叫ぶ。馬鹿者、君には手がないのか。鼻水をぬぐって、他者のせいにするのをやめるのだ」
嘆いても現実は動かない
私たちがどれだけ「不公平だ」と叫んでも、その言葉が請求書を支払ってくれるわけではありません。ニュース記事や同情の声が、怪我を治したり、仕事のトラブルを解決してくれるわけでもありません。
むしろ、自己憐憫に浸ることはエネルギーを奪い、問題を解決するための気力を失わせてしまいます。
二つの選択肢
結局、選択肢は二つに一つです。
- 不当な扱いを受けたことを繰り返し考え、立ち止まる
- 現状を受け入れ、今できることに集中して前へ進む
ローマ皇帝マルクス・アウレリウスも『自省録』でこう述べています。
「自分を大事に思う気持ちがあるなら、力を振り絞って自分を救い出せ。その力があるうちに、やるのだ」
誰かが助けに来るのを待つのではなく、自分の足で一歩を踏み出すこと。これが本当の意味での自由です。
職場での実践例
この考え方は、仕事の場面でも大いに役立ちます。
- 上司や同僚に不当な扱いを受けたと感じたとき
不満を募らせるだけでは何も変わりません。代わりに「今の状況で自分にできる改善は何か?」に集中すれば、キャリアの新しい可能性が開けます。 - 失敗やトラブルに直面したとき
「なぜこんなことに」と考える代わりに、「次に成功するために学べることは何か」と問い直せば、行動のエネルギーが湧いてきます。 - 理不尽な環境で働かざるを得ないとき
状況を変えることが難しくても、自分の姿勢や学びの取り方は変えられます。それが次のチャンスへの準備になるのです。
日常生活での応用
- 体調を崩した → 「なぜ今?」と嘆くより、休養と回復に専念する。
- 人間関係で裏切られた → 怒りに固執するより、自分の価値を守りながら前に進む。
- お金の問題に直面した → 愚痴ではなく、支出を見直し副収入の道を探す。
嘆きを行動に変えるだけで、現実は少しずつ改善します。
「鼻をふいて前に進む」という比喩
エピクテトスの言葉は、単なる叱責ではなく、行動への強い呼びかけです。鼻水をすすって座り込むのではなく、鼻をふいて立ち上がり、前に進む。それだけで一歩、状況は動き始めるのです。
まとめ
- 不公平や理不尽を嘆いても、現実は変わらない
- 選択肢は「愚痴る」か「動く」かの二つしかない
- エピクテトスもマルクス・アウレリウスも「行動せよ」と語った
- 小さな一歩を踏み出すだけで、前進が始まる
👉 だからこそ「鼻をふいて前に進む」――これが逆境を乗り越える最もシンプルで力強い方法です。