『「消費税の毎月納税」という悪夢──中小企業を追い詰める官僚の論理』
浮上した「毎月納税」という禁じ手
高市政権が掲げる経済対策に対し、失望の声が広がっている。その根底にあるのは、財務省主導の「財政規律」から一歩も抜け出せていないという現実だ。「税は財源であり、取れるところから取る」という姿勢が変わらない限り、日本経済の本格的な再生は望むべくもない。
そうした中、11月14日の国会質疑において、耳を疑うような議論が交わされた。参政党の安藤議員が指摘した、消費税の「毎月納税」案である。
現在、多くの事業者は消費税を年に1回(規模により中間申告あり)まとめて納税している。しかし、政府や税理士業界の一部から「消費税を毎月納付させるべきではないか」という議論が出ているというのだ。この提案の背景には、「消費税は消費者からの預かり金なのだから、事業者が運転資金に使い込む前に徴収すべきだ」という、財務省特有の論理が存在する。
しかし、この論理には現場の経営実態が完全に欠落しているといわざるを得ない。
運転資金を奪い、倒産を加速させる
なぜ「毎月納税」が危険なのか。それは、中小企業の資金繰り(キャッシュフロー)を即座に破綻させる恐れがあるからだ。
商売の現場において、手元の現金は「次の仕入れ」や「給与支払い」のために不可欠な血液である。多くの企業は、売上として入ってきた現金を一時的に運転資金として回し、事業を継続させている。もし、これを毎月強制的に徴収されればどうなるか。仕入れに回すべき資金が枯渇し、黒字であっても現金が足りずに倒産する「黒字倒産」が急増することは火を見るよりも明らかである。
そもそも、消費税は「預かり金」ではない。判例上も、あくまで「対価の一部」であり、企業が生み出した付加価値に対する課税、いわば「第二法人税」としての性質を持つ。赤字で利益が出ていなくても納税義務が発生するこの過酷な税制において、納税のタイミングまで早めれば、体力のない中小企業はひとたまりもない。
事務負担への「二重基準」
さらに憤りを感じるのは、政府の対応における明らかな「二重基準(ダブルスタンダード)」である。
国民が消費税減税を求めた際、政府は常にこう答弁してきた。「レジシステムの改修や事務負担が大きいため、減税には時間がかかる」と。しかし、今回の「毎月納税」や、先に導入されたインボイス制度についてはどうだろうか。「事業者の事務負担には配慮しつつ進める」と言いながら、実際には複雑怪奇なシステムを強引に導入し、現場に莫大な手間を強いている。
減税のときは「事務負担」を理由に拒否し、増税や徴収強化のときは「事務負担」を無視して突き進む。この不誠実な姿勢こそが、国民の政治不信を招いている最大の要因ではないだろうか。
経済の血管を詰まらせるな
「預かり金だから返せ」という幻想に基づき、経済の血液である現金を毎月吸い上げる。それは、瀕死の患者から輸血用血液を抜き取るような行為に等しい。
安藤議員の指摘に対し、片山財務大臣は「丁寧に検討する」と答弁した。しかし、検討すべきは徴収の強化ではなく、消費税そのものが持つ欠陥の是正であるはずだ。物価高にあえぐ今、必要なのは企業の活力を削ぐことではない。
私たちは、この「毎月納税」という議論が、単なる徴収の効率化ではなく、日本の中小企業を壊滅させかねない劇薬であることを、正しく認識する必要がある。
