やらされ仕事」を「やりたい仕事」に変えるには?リーダーがすべき唯一のケア
「お客様は神様だ」と言いながら、社員には「死ぬ気で働け」と強要していませんか? あるいは、「部下が全然自分から動いてくれない」と嘆いていませんか?
もしそうなら、あなたは組織の「エンジン」であるスタッフを整備不良のまま走らせているようなものです。これではいつか故障してしまいます。
この記事では、『7つの習慣』の著者コヴィー博士が提唱する**「PC(Production Capability=成果を生み出す能力)」**という考え方を、組織マネジメントに応用する方法を解説します。
理学療法士としてアスリートに関わる中で痛感するのは、「最高のパフォーマンス(成果)」を出す選手ほど、練習と同じくらい「体のケア(能力への投資)」を大切にしているということです。組織も全く同じです。
結論をお伝えします。最高の成果を出したいなら、まずはお客様と同じ熱量で「スタッフ」を大切にしてください。
スタッフは「道具」ではなく「資産」である
多くのリーダーは、目先の売上や成果(Production)に追われ、それを生み出す元となるスタッフ(Capability)を軽視しがちです。 しかし、コヴィー博士はこう指摘します。
「(企業における)PC(Production Capability=成果を生み出す能力)活動とは、大切な顧客に自発的に接する態度と同様に、スタッフに対しても自発的に接することである」
ガチョウ(スタッフ)を殺していませんか?
『7つの習慣』で有名な「ガチョウと金の卵」の話があります。 早く金の卵(成果)が欲しいからといって、ガチョウ(スタッフ)の腹を割いて殺してしまっては、二度と卵は手に入りません。
- 悪いリーダー:ガチョウに餌もやらず、休ませず、「もっと産め!」と叫ぶ。
- 良いリーダー:ガチョウの健康状態を気遣い、大切に育てる。
顧客に「いらっしゃいませ!」と笑顔で接するのと同じように、スタッフにも「ありがとう」「体調はどう?」と接していますか? スタッフを「コスト(費用)」ではなく「キャピタル(資産)」として扱うことが、PC活動の第一歩です。
「やれ」と言われて出す力 vs 「やりたい」から出す力
なぜ、スタッフを大切にする必要があるのでしょうか。それは、人間の構造上、命令では引き出せない力があるからです。
「それによって、スタッフは自発的に行動でき、自分の心と頭の中にある最高のものを提供することができるのだ」
命令できるのは「手足」だけ
「この書類を作れ」「あそこへ行け」と命令すれば、部下の「手足」は動かせます。しかし、「情熱」「創造性」「忠誠心」といった「心と頭の中にあるもの」は、命令では絶対に引き出せません。
これらは、本人が「このリーダーのために頑張りたい」「この仕事が好きだ」と自発的に思った時にだけ、提供されるものです。
理学療法のリハビリでも、「先生に言われたからやる」患者さんは治りが遅いです。「治して○○に行きたい!」と自ら目標を持った(自発的な)患者さんは、驚くべき回復力を見せます。 「心」というエンジンを回す鍵は、命令ではなく「尊重」と「信頼」しかないのです。
従業員満足(ES)なくして顧客満足(CS)なし
「お客様を第一に考えろ」と指導するのは正しいですが、そのサービスを提供するスタッフの心が荒んでいては、お客様を幸せにすることなど不可能です。
不機嫌なシェフが作った料理が美味しくないように、大切にされていないスタッフは、顧客を大切にできません。 **「スタッフ=一番身近な顧客」**と考えてみてください。スタッフが満たされて初めて、その溢れたエネルギーが顧客へと注がれるのです。
まとめ・アクションプラン
今回の記事のポイントは以下の3点です。
- 成果(P)を出し続けるには、それを生み出すスタッフ(PC)へのケアが不可欠。
- 命令では「手足」しか動かない。「心と頭脳」は自発性によってのみ提供される。
- 顧客と同じくらいスタッフを大切にすることで、結果的に最大の成果が得られる。
「甘やかす」のではありません。「尊重する」のです。機械のメンテナンスをするように、人の心もメンテナンスが必要です。
Next Action:今日、部下に「問いかけ」をする
明日から急に態度を変えるのは恥ずかしいかもしれません。 まずは、部下やチームメンバーに**「仕事をしやすくするために、僕ができることはある?」**と聞いてみてください。
「命令する人」から「支援する人(ケアする人)」へとスタンスを変える第一歩です。
この「P/PCバランス(成果と能力のバランス)」は、組織論だけでなく、親子関係や健康管理など、人生のすべてに通じる黄金律です。より深く学びたい方は、**『7つの習慣』**をリーダー必携のバイブルとして、デスクに常備しておくことをおすすめします。
