『円安と利上げの真実:メディアが報じない日本銀行の公式見解』
所管の違いと通貨の真実
何度でも繰り返すが、為替レートは日本銀行の所管ではない。それは財務省の管轄である。そして、現在の物価上昇の主因が輸入物価の上昇であるという説も、正確さを欠いているといえる。 多くの人々が「円安によって輸入物価が上がり、それが消費者物価を押し上げている」と思い込んでいる。確かに、二〇二一年から二〇二二年にかけての輸入物価上昇のインパクトは凄まじいものであった。その記憶があまりに強烈であるため、我々は今もなお、過去の残像に囚われているのではないだろうか。 現実には、輸入物価上昇が消費者物価上昇の主因であったのは、二〇二二年までの話である。しかし、事実を示されてもなお、多くの人は円安や輸入物価のせいにしたがる。これを心理学用語で「認知的不協和」と呼ぶ。自身の信じたい物語と事実が食い違ったとき、人は事実の方を歪めて解釈しようとするのである。
日銀の公式文書が語ること
二〇二五年十二月十九日、日本銀行は金融市場調節方針の変更を発表した。この公式文書において、日銀は決して「円安だから利上げをする」とは明言していない。 彼らが利上げの主な根拠として挙げているのは、「賃金上昇の販売価格への転嫁」である。つまり、春季労使交渉、いわゆる春闘によって賃金が上がり続けていることを理由としているのだ。しかし、ここで冷静に数字を見る必要がある。日本の労働者のうち、労働組合に加盟しているのはわずか一六・一%に過ぎない。一部の大企業で見られる賃上げの動きを、さも日本全体の傾向であるかのように捉え、政策変更の根拠とする認識には疑問が残る。 それでも、表向きの理由はあくまで「賃上げの継続」であり、為替レートの変動ではない。文書の最後でリスク要因として為替に触れてはいるが、それはあくまで注視すべき項目の一つとして挙げられているに過ぎないのだ。
メディアの嘘と我々の覚悟
日銀が「円安対策」として利上げをしたわけではないにも関わらず、メディアはこれからも「円安だから利上げ」というナラティブ、つまり物語を強調し続けるであろう。たとえ日銀が利上げを断行したところで、必ずしも円高に振れるわけではないという現実があるにも関わらず、だ。 最も恐れるべきは、国民が何の疑いも持たず、メディアが垂れ流す情報を無批判に受け入れてしまうことである。誤った情報を信じ、日銀にさらなる利上げを求めることは、結果として自分たちの首を絞める行為に他ならない。 いい加減、目を覚ますべき時である。事実に基づかない発言を繰り返し、それが誤りだと判明してもなお同じ主張を続ける者たちに対し、我々は静かに、しかし毅然と説明を求める必要がある。感情的な攻撃ではなく、事実に基づいた指摘こそが、嘘を暴くための最も強力な武器となるのである。
